しとりの右手に宿ってしまった四魂の欠片を摘出するには優れた霊力と四魂の欠片を包んでいる邪気を祓える浄化の力を持っている人でなければいけない。
どうして、私に四魂の欠片が見えるのかも気になるけど。それよりも四魂の欠片を埋め込んだのは神無本人なのか奈落が仕向けたのかで対応を変えることになる。
もしもこれを仕組んだのが奈落だったなら、その邪気は最低でも日暮さんや桔梗クラスの巫女に頼まなければ摘出する事は難しい。
「しとり、右手は大丈夫?」
「ん!つめのびる!」
「う、うぅ~ん……どうしましょうか」
肉付きの面みたいになったり……。
やめよう、トラウマが再発しそうだった。
「明治にも四魂の欠片はさ迷っているのかな?」
ポツリと呟いた言葉にティーカップの取っ手に指を差し込んで湯呑みのように紅茶を飲んでいる時代樹の精霊に視線を向けるものの。彼女は語ることはせず、美味しそうにパンケーキを食べている。
桔梗の笑顔を見ることが出来る貴重な機会です。
「さて、亭主の帰宅だ。私は戻るとしよう」
そう言うと時代樹の精霊は柱の中に消えていき、背広姿の左之助さんが長谷川君達を引き連れて廊下を通って居間の前を通りすぎようとして、ピタリと動きが止まった。
「誰か来てたのか?」
「パンケーキの匂いする!ずるいわ!」
「ん!しとりたべた!」
ワチャワチャと騒ぎ始める三人を置いて、私の傍に近づいてきて匂いを嗅ぎ始める左之助さんに驚きながら、がっしりと私の身体を抱き締める彼の腕の中で、彼のやりことならばと受け入れる。
「男の臭いはしねえな」
「景ちゃんさんは浮気とかしないでしょ」
「まあ、シャチョーはベタベタしすぎだけどな」
「僕は両隣に同意しておこうかな」
そう言うと三人は割り当てられた個々の部屋に向かい、左之助さんは「オレってそんなに束縛してるように見えるのか?」と自分のやっていることに困惑してしまっていることに私も困惑する。
「左之助さんは束縛したいんですか?」
「い、いや、お前を縛り付けるつもりは無いんだが他のヤツにはお前を縛り付けてるように見えるのか。でも景と触れ合えないのは辛い」
「私もです。それに今まで通りで良いんです」
私の一言に「……もっと仲良くしてえのに?」と唇が重なるほどに近い距離で囁かれ、ドキドキしてしまう私と左之助さんをしとりが見つめていた。
「嬢ちゃん、見ちゃダメだぜ」
「ん、なんで?」
「そりゃあ、あれだよ。うん」
「しとりもぎゅーしたい!」
「よし、行ってきなさい」
「ん!!!」
しとりも私に抱き付いてきた。
まあ、こういうのが一番ですね。しとりの右手に埋め込まれていた四魂の欠片のこと、いつ左之助さんにも伝えようかな。