個魔の方の黒衣の中に仕舞われていた着替えや少ないけれど。日用品も幾つかあるので火起こしや料理の不便はありません……ただ、何で私の割烹着や料理器具を個魔の方が持っているのか聞きたいです。
戦骨と椿の二人が拠点にしているわけでもない人里に長居出来る訳もないですし、少しずつ何か手懸かりになものを探すべきなんだろうけど。
ドンや親分もいてくれたらしとりを安心して預けておけるのに、二匹とも直ぐに自分の寝床のフィット感を直していた。まあ、久しぶりに帰れた場所を確かめるのは当然ではある。
「景、霊力の気配だ」
「日暮さんですか?」
「いや、コイツは…」
「桔梗の霊力よ、また性懲りもなく」
桔梗。
かつて犬夜叉と恋仲であり現在は土塊と骨の身体で甦った死人。未だに桔梗に未練を持っている犬夜叉と奈落……奈落は私にも変な感情を向けているけど。
あれは代用品を探しているだけです。
「……四魂の欠片の気配を追ってきたが、まさかお前に会うとは思わなかったぞ。椿」
「私だって会いたくなかったわ、桔梗」
舌打ちをする椿と無表情のままやって来た桔梗の二人からしとりを連れて部屋の隅に行き、蛮竜の手入れをしている戦骨は「お前ら喧嘩するなら他所でやれよ」と言い、溜め息を吐いている。
「そこの子供に四魂の欠片を埋め込んだのは奈落であろう。何を考えているのかは知らないが、母娘を狙っているのは事実だ」
「もっとオブラートに包んでやれよ」
「おぶ?」
明治時代でも通じませんよ、それ。
「……まあいい。四魂の欠片を渡せ」
「ん!しとりのてー!」
ブンブンと右手を振る。
ここにあることを伝えるしとりの反応に漂っていた重苦しい空気は霧散し、椿は「怪我させたら怒るわよ」としとりのことを心配してくれた。
ありがとうございます。
「奈落の邪気は完全に祓われているな。しかし、かごめと同じく未来の時代を超えてやって来たか」
「分かるのか?」
「分かるんですか?」
桔梗の呟きに戦骨と私は同時に問うと「私にもかごめの記憶は少なからず流れ込んで来ている。お前達の事情は少なくとも理解した」と答えた。
「ほら、取れたぞ」
「ありがと!」
「未来ねえ?この小娘は日暮かごめみたいに時を渡るような使命はないと思うわよ?」
「ん!しとり、母ちゃんをまもるの!」
「フフ、ありがとう」
四魂の欠片を取って貰ったしとりは元気に走り寄ってきて、ぎゅうっと私に抱きついてくる。フンスと自信満々に突き出す右手を見る。
うん、とても綺麗な手です。四魂の欠片も何も入っていないので、これで奈落に位置を知られることはないでしょうけど。
やはり奈落の目的が分からないわね。