「さて、私は行くとしよう」
「あ、待って下さい」
「なんだ?」
「その、私が奈落に狙われる理由が分からないので一緒に考えてもらえると嬉しいです」
「確かに似てねえのに不思議だな」
戦骨の呟きに考え込むように桔梗は暫し立ち止まり、じっくりと私の顔や身体を見つめていく。桔梗どころか普通の女性と比べても細い痩躯、戦骨が言うように彼女と似ていない私を気に入るのは不可解なのだ。
「奈落に何かした記憶はあるか」
「……儂のものになれ。と言われたので素直に断りましたけど。まさかそれで四魂の欠片を仕込んで居場所を知ろうとする訳が……」
「するな」
「するでしょうね」
私の言葉を否定する言葉が次々と飛び交う。桔梗も静かに「私を狙った理由も似たようなものだ」と言い、どうしたものかと悩みながら、膝の上に座っているしとりの頭を撫でてあげる。
「いや、奈落がお前を狙う理由は分かった。その子だ、正確にはその子を慈しみ、愛するお前の纏う慈母の気と清浄な霊気をアイツは欲しいのだろう」
「慈母の気と清浄な霊気か。確かに刀々斎と灰刃坊も蛮竜を鍛え直すときに景の血を使っていたのも景の飲んだ神酒のおかげだろうしな」
「成る程、神酒か」
そう言って私が狙われる理由が次々と解明されていき、喜べば良いのか悲しめば良いのか。どちらを行えば良いのかが分からない。
「……えっと、奈落は母親の愛が欲しいということで良いのでしょうか?」
そう桔梗に聞けば「概ね合っている。ただ、今更ヤツが母を求める理由は分からないがな」と会話を終わらせ、今度こそ家を出ていってしまった。
しとりとお腹の子を守らないといけないのに、奈落は私の子供になりたいという謎の野望を抱いている。つまり、奈落は自分の孫か曾孫ぐらいの私にオギャってバブりたいということですか。
「もしや奈落って変態なのでは?」
「言い得て妙ね」
「あー、奈落は桔梗と景を手に入れて自分だけのオギャバブランドを作りたいって事か。確かに変態だが景にバブみを感じるのは事実だ」
「あの、私は普通の母親ですよ?」
しとりやお腹の子を育てていれば自然と母性は生まれますし、子供を愛する母親になるのは当然の事です。いきなり子供になりたいと言われても困ります。
そもそも何処で母親の愛を知ったんで……神無の視界と聴覚を通して自分が子供になっていたと考えれば、こうなったのも頷けますけど。
私のプレゼントした櫛は大丈夫かな。
早く左之助さんのところに帰りたいですね。しとりもお父さんに会えないのは寂しいだろうし、きっと私だけじゃ心細いですよね。