しかし、二股をしようとする奈落は最低です。
「深く考えるのはやめだな。奈落は景と桔梗が欲しくて妖怪に変態した変態ったことで良いな?」
「まあ、あっているわね」
「じゃあ、どうやって奈落の執着を失くすのかを考えるべきだけどよ。お前らとしてはどうなんだ?奈落に好かれると嬉しかったり」
「反吐が出る。死ねば良い」
「えと、やめて欲しいです」
「成る程、二人とも『さっさと死ねよ、ゴミクズ野郎が』と言っているな」
「耳腐ってるの?」
私達の言葉を物凄く曲解……というほどではないけど。かなり酷い解釈をする戦骨の頭を本気で心配する椿のやり取りを眺めつつ、今こうしている間も奈落も悩んでいるのだろうかと考えてしまう。
もっともその悩みは自業自得だけど。奈落の過去と最後の瞬間を考えると、彼もまた四魂の玉に踊らされていた被害者の一人なのかも知れない。
現在の奈落はクマ吉君みたいだけど。
「奈落も『どちらを娶るべきだ。いっそのこと二人とも儂の妻にしてやるべきか?』とか思ってたら、とんでもない変態みたいだよな」
「「気色悪い事を言うな」」
「あ、あははは…」
桔梗と椿の辛辣な言葉に苦笑いを浮かべながら、しとりの耳を塞いで聞こえないようにする。まだ小さくて可愛い女の子のしとりに聞かせるには早い言葉も悪い言葉もありますから仕方ない。
「景、お前はどうする?」
「どうする、とは?」
「決まっている。このまま事が終わるまでこの時代に残るのか、あるいは」
「フフ、そんなに心配しなくても大丈夫です。絶対に左之助さんが迎えに来てくれます」
「おーおー、熱々だな」
私をからかうように戦骨は笑い、囲炉裏の火を強めるために薪を増やしていく。余り入れすぎるのは危ないと思うけど、大丈夫なのかな。
「ん…んぅ…」
「まだご飯を食べてないから寝ちゃだめよ?」
「…ん…」
しとりが目元を擦って、うつらうつらと頭を揺らし始める。今日も色々な事があったから眠くなっちゃったのね。早く明治時代に帰って安心してほしい。
「椿婆さん、雑炊にするか?」
「漬けてた梅干しと山菜を混ぜるなら、川魚も釣って来なさい。無駄に釣りが上手いんだから全員分用意してきなさいよ。桔梗も食べていきなさい」
「土塊の私には不要だ」
「子供がいるのに一人だけ食べないなんて変でしょう。それに土塊だろうと食べることは出来るんだから人らしく在りたいなら、ちゃんと食べなさい」
「……母親か、お前は」
ライバルだった二人が他愛ない話で盛り上がっているところを見るのはすごく嬉しいです。とてもワクワクしてしまいます。