某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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奈落の妬み 序

こっそりと背伸びして窓枠越しに外を見る。

 

二本の蛮竜は強烈な突風を巻き起こして奈落の身体を切り裂き、死ぬかもしれないという焦りと私を手に入れ損ねた怒りでこの場所に踏み留まっている奈落の視線は私の居る家に向いている。

 

時代樹の作り出す時空を越える穴を通り抜けなければいけないのに、左之助さんが心配で個魔の方にしとりを任せて私は此処に残ってしまった。

 

怖いけど。奈落が私に意識を向ける度、左之助さんと戦骨の戦いは有利に進んでいる。まだ奈落の心臓たる赤子を産み出す時期じゃなく、新生奈落に生まれ変わっていない今ならば倒せる。

 

「オレの女房に近づくんじゃねえッ!!」

 

「蛮竜閃ぐらい使えるようになりなッ!」

 

「おのれ、儂の邪魔をするな!貴様等にとってあの女は無用の長物であろう!ヤツの価値も分からぬ、貴様があの女の夫だと!?」

 

嗚呼、またですか。

 

まあ私の価値を知った風に語る人なんですね。

 

左之助さんや薫さん、緋村剣心達のように私本人を見てくれるわけじゃなく奈落も他の人のように自分の見付けた一部しか見ず、私という存在を知らしめる価値だと。そんな不確定で曖昧な意味を押しつけるですね。

 

「……何を言うかと思えば景の価値だ?アイツの価値は怖くても逃げたくても諦めずに前を向いて、立ち止まっても必ず一歩ずつ歩き出せる心の強さだ。テメェみたいに優しいから欲しいなんて宣う阿呆に景を差し出すわけねえだろうが!!!」

 

「おお、流石は旦那だぜ。良いことを言う」

 

「当たり前だ。オレと景は七年近くずっと一緒に過ごして、爺さん婆さんになってもオレ達は一緒に生きるって約束しているんだ!」

 

は、恥ずかしいことをあんなに堂々と言うなんて恥ずかしいですけど。とても嬉しいです、私も左之助さんとずっと一緒に生きていきたいです。

 

ふと視線を感じて後ろに振り返ると「さっさと行ってくれないかしら?私も何時間も結界を張り続けるなんて事はやりたくないのよ」と殆んど怒っているようにしか見えない椿に凄まれ、ビクリと身体を震わせる。

 

「わ、分かりました。椿さん、短い間ですけど、守ってくれてありがとうございます。これ、私のお古ですけど、肌を整える顔料です」

 

「…………その言い方、まだあるわね」

 

「えっ」

 

「次に会うことがあったら新しいものを寄越しなさい。それで今回のお代はチャラにしてあげる。だから、さっさとめいじだかなんだか知らないけど、自分の居るべき場所に帰りなさい」

 

そう言って微笑んでくれた椿さんに頭を下げて、時代樹の作り出す時空を越える穴を潜り抜けた瞬間、私は転移する前に座っていた居間に飛び出し、個魔の方にお腹を傷付けないように抱き締めてもらった。

 

左之助さん、早く帰って来てくださいね。

 

 

 

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