無事に明治時代に帰ってくることに成功し、左之助さんが帰ってくるのを不安げに見つめているとドクトル・バタフライやススハムも家にやって来てくれた。けど、どうしてこんなに都合良く?
「糸色君、今は話し合うときではなく左之助君を素早く此方の時代に呼び戻す事に専念したまえ。君の想いが続く限り、この時空の裂け目は閉じない!」
「もしもの時はアタシの脚で助けに行く」
「は、はい!」
二人だけで来た理由は何となく理解できました。
転生者内で最速のススハムならば左之助さんを回収し、此方に引き戻せる。ドクトル・バタフライならば武装錬金で距離感を狂わせ、奈落の侵入を妨害できる。
今の私に出来るのは左之助さんを此方の世界に繋ぎ止めるイメージを固定化すること。多分、私が向こうにいたときは左之助さんがしてくれていたことだ。
「やはり、まだ彼は奈落と交戦中の様だ。僅かに隙さえ出来れば左之助君を迎えに行くことは出来るのだが、どうにか出来ないか」
「(奈落を引き付ける。私がもう一度戦国時代に行けば奈落の気を逸らすことは出来るけど、そう何度も上手く事が進むとは思えない)」
「相楽カッケマッ。余計な事は考えるな、アンタは自分の旦那を受け止める準備をしておけば良い、奈落だろうが変態だろうが誰よりも何よりも疾く駆け抜けるアタシには追い付けない」
そう言うと同時にススハムの姿は消えた。いえ、私の肉眼では捉えきれない速さで時空の裂け目に飛び込み、左之助さんを捕まえに行ってくれたんですね。
「受け取れ、景ッ!!」
「は、はい!」
血だらけの左之助さんを抱き締めるように受け止め、時代樹の精霊の作り出した結界とドクトル・バタフライの武装錬金によって奈落の触手は私には届かず、忌々しそうに奈落は左之助さんを睨み付けていた。
「……わた、私はッ、貴方の物にはなりません。母にも妻にも娘にも貴方と関わりを持つ事柄に収まる事は絶対に嫌です。貴方は私の大切な人を二人も傷付けたんです、どんな理由があろうと許しません」
「良く言ったな、景。そういうわけだ、貴様は戦国乱世の時代に戻れ」
「必ず、何代経とうと儂は諦めぬ」
えっ、今子供や孫のストーカーになりますって宣言を受けたような気がするですけど。気のせい、多分、気のせいですよね?
そう問うようにチラリとドクトル・バタフライを見るも目を逸らされ、ススハムにも目を逸らされ、彼のネチネチした執着心の強さに不安を抱くばかりです。
しとりにもしものことがあったら……。