某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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日常編
遅刻の来訪者 序


「遅くなりました。糸色殿」

 

朝。まだ左之助さんやしとり達の眠っている時刻に玄関の戸を叩く音に杓文字を持ったまま鍵を開けた瞬間、背広姿に般若面というアンバランスな格好で立つ般若の姿に困惑してしまった。

 

「な、なんで此処に?」

 

「異なことを言う。私を呼んだのは緋村抜刀斎ではありませんか。して、此度の敵対する剣客兵器という輩はどちらに?」

 

ずいずいと迫り来る般若面に過去の出来事を思い出してしまい、ビクリと身体が強張りながら後退り、壁に寄り掛かるようにへたり込んだ。

 

さ、左之助さんを呼びたいけど。奈落に受けた傷が治っていないのに無理に起こしたら怪我が悪化するかも知れないから私が対応しないといけない。

 

「申し訳ない。怖がらせてしまった」

 

「あ、い、いえ、此方もすみませんでした」

 

「やはり私は一度貴女を拐った身故、こうして私に怯えるのは致し方無いことです。ですが、せめて此度の戦いで挽回致しますため!どうか操様と御頭の祝言に出席して頂きたいのです!!」

 

「祝言、巻町さんと四乃森さんが…」

 

それは、すごく良いことです!

 

「朝っぱらからなに騒いで、何で此処に般若がいるんだよ。蒼紫の野郎も来てるのか?」

 

「左之助さん、巻町さんが祝言を挙げるそうです!」

 

「あー、それを知らせに来てくれたのか」

 

「いや、私は剣客兵器と戦うために来た」

 

「剣客兵器なら壊滅した」

 

左之助さんの一言に般若の動きが止まり、フラリと玄関の戸に背中を預けるように「ま、まさか私は遅れてしまったのか?」と呟いている。遅れたというのは少し違いますけど。

 

確かに終わりには間に合いませんでしたね。

 

「まあ、用件は伝えた。糸色殿、出来れば現在連載している絵草紙にも名前を…!」

 

「はい、いつものやつですね」

 

風呂敷を四つも重ねて航海中に湿気ないようにしてくれていた般若の気持ちに嬉しくなりつつ、最後の目立たない場所に名前を描き、だんだんと漫画による文明開化の進みに私は満足してしまう。

 

嬉しそうに帰っていく般若を見送り、左之助さんをしとりの眠っている寝室に連れていき、もう少しだけ安静にしていて欲しいと伝える。

 

「景の絵草紙は人気だな」

 

「そうですね」

 

私の憧れた人達の漫画を広めるために始めたことだけど。今はすっかり私の楽しみから大切な思い出の一つに変わってしまった。

 

でも、ちょっとだけ夢というよりも野望と言うべきものを抱いているのは左之助さんにも内緒です。いつか、この世界を繋げてしまう能力の事なんて気にせず、自由に漫画を書き続けられたら良いのにな。

 

「……景、何か悩んでるのか?」

 

「フフ、これは内緒です」

 

いつか好きに描いていたいなあ……。

 

 

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