般若の訪問後。
二日ほど経過して、またもや早朝に玄関の戸を叩く音に左之助さんは面倒臭そうに膝の上に乗せていたしとりを座布団の上に置き、ドンと親分は玄関に顔を向ける。
何か悪いものでも来たのかな?と首を傾げ、左之助さんを待つ間にお腹が空いているしとりのために、小さな海苔を巻いたおかかのお結びを渡してあげる。
「ん!おかか!」
「ちゃんといただきますを言うのよ?」
「いたたぁきます!」
朝から元気にお結びを食べるしとりの頭を優しく撫でてあげると嬉しそうに目を細め、笑顔でお結びを食べる彼女を抱き締めてしまいたくなるけど。
ご飯を食べているときに抱きついたりするのはお行儀が悪いので食べ終わるまで待たないとダメです。そう自分自身に言い聞かせながら玄関の方に視線を向けると左之助さんと知らない人が話していた。
アレは誰だろう?
「景、コイツってお前の知り合いか?」
「いえ、会ったことはありませんが…何処かでお会いしたことがありますか?」
「私を忘れたのか。それに、その指輪は……」
「オレが渡したエンゲージリングだ。オレの壊れた相棒を溶かして、景とオレの祝言を祝うときに交換したヤツだが、それがどうかしたのか?」
堂々とお話しされると照れてしまいますね。
しかし、本当に記憶に残っていない相手だ。
私の「特典」は記憶を永久的に保存し、瞬時に呼び起こす事も出きるため会ったことがあれば絶対に忘れるなんていうことはないんですけど。
「本当に覚えていないのか…」
「……えと、すみません……」
「そうか。思えば十数年近く昔に出会っただけで私の事を覚えていること事態が有り得ないな。さて、どう切り出したものか」
この人は本当に誰なのだろうか。
十数年近く昔って、そもそも今年で二十歳(数え年なので十九歳の可能性もあらますけど)になる私が知っていること事態が可笑しいのでは?と疑問を抱きつつ、何だか怖いので左之助さんの背中に回り込む。
「どうすれば思い出してもらえるか」
「……ちよっと失礼しますね」
ウンウンと玄関先で唸っている人を置いて、左之助さんを台所まで連れていき、私の年齢と彼の話す私は全くの別人の可能性を話す。
「成る程、ヤバいヤツか」
「た、たぶん、そうです」
どうして、私の周りに集まってくる男の人は悪い人や変な人ばかりなんでしょうか。もっと左之助さんのように……いえ、最近の左之助さんも手足を縛るとか斬るとか閉じ込めるとか怖いことを言っていますね。
一体、何故なのだろうか。