現在、私を取り巻く環境は混沌は渦巻いている。
白面の者、奈落、そして昨日の朝に訪れた才賀貞義ことディーン・メーストル又はフェイスレスの三つ巴の戦いが……いや、勝手に戦って下さいとしか言えない立ち位置で、私の何がラスボスを惹き付けているのかは分からないけど。
現状で分かっているのは怖いことです。
三人の誰かに捕まれば私は終わり。左之助さんやしとり、大切な家族に会うことは出来なくなり、大切なお友達と話すことも出来なくなる。
「(それだけは嫌だなあ……)」
絵を描く手を止め、ぼんやりと窓の外を見る。
左之助さんの再検査と戦国時代に飛んだときに埋め込まれた四魂の欠片の摘出後の検診を受けるしとりを待つ間、私の病室も兼ねた部屋のベッドに座ったままオーバーテーブルにペンを置き、溜め息を吐いてしまう。
いっそのこと彼らを倒せる人の登場する漫画を、なんて左之助さんやしとり、未来の子供達を危険に晒すものは描けませんからね。
それに私はいつまで…………。
「……続きを描きましょうか」
私が「特典」の他に描くものが現実の世界に反映するという不思議な能力を持って生まれた理由はドクトル・バタフライの推察を幾つか聞いて、何となく理解は出来ている。だから私は描きたいものを描けない。
私の死後も漫画は残り続けるのかと考えると嬉しいような恥ずかしいような気持ちになる。でも、その分だけ幸せも不幸せも生まれて世界が変わる。
「ドクトル、どうします?」
「ふむ、バトル漫画ではなく日常系やグルメ系を描けば比較的に安全な世界になるとは思うが。幸い、転生者の私達には世界を繋ぐ楔の役目は担えない。君の望んだものを描くだけ描いてみるのもアリだろう」
「……知っている癖に意地悪ですね」
「大人とは卑怯な物だよ。尤も君は卑怯とは無縁の位置にいるおかげで私達は安心して糸色君に相談することができ、君の周りでなら普通の人として話し合える。──ただ、この『レッドマン』は止めておきたまえ、私も標的になりそうだ」
「あっ、そこは気にするんですね。私もスプラッター系の物は怖いから苦手なんです、でも白面の者に勝てそうなのが彼しか居なさそうで……」
私がそう言うとドクトル・バタフライは「ウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊は世界規模の危険も有り得るからダメだが、アイテムを描いてその部分だけ抽出するということも出来るか?」と腕を組み、髭を触りながら真剣に思案し始めていた。
「ふむ、糸色君、一つ聞いても良いかね」
「はい。なんですか?」
「『特典』の制限を解かずにドラえもんのひみつ道具の設計図は描くことは出来るだろうか?」
「普通に描けますけど。えと?」
どうして、そんなことを唐突に聞くのだろう?