某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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真古流剣術譚 破

久しぶりに神谷道場を訪れると何処か重苦しい雰囲気を漂っている室内に尻込みし、今日は帰ろうとしたら左之助さんに肩を抱かれて部屋の中に入ってしまう。

 

緋村剣心が石動雷十太に負けたとは思えないけど。なにかしらトラブルが起こっているのは事実だろうと確信めいた物を感じながら神谷さん達にヒラヒラと軽く手を振って挨拶を交わす。

 

「辛気臭せえな、どうしたんだよ」

 

「ちょっとね、気になるヤツが現れたのよ」

 

普段の活気というか騒々しさのない神谷道場に首を傾げる左之助さんの問いかけに神谷さんは言い淀みながらも悔しさの滲んだ言葉を漏らす。

 

おそらく石動雷十太の事だろうけど。ここで私が我が物顔で話したら、思い切り神谷さんの心情も拗れるかも知れないし。あまり出来ることはないわね。

 

「糸色殿、お主の知恵を借りたいのでござるが。真古流……いや、刀身に揺らぎが生じる剣技について知っていることはないだろうか」

 

「あれの正体が分かるの、糸色さん!?」

 

「……刀身に揺らぎが生じる、ですか?」

 

「刀身が揺れるって折れてんじゃねえのか?」

 

いきなり緋村剣心に質問されたことにビックリしてさけびそうになったけれど。左之助さんも神谷さんも明神君も期待の視線を一斉に向けてきた。

 

多分、緋村剣心は武田観柳や四乃森蒼紫の狙った私の知恵を見極めようとしている。まあ、そうなるのは仕方無いことだけど、少しだけ悲しい気持ちになるものの。これは頼られていると考えれば良いのかも知れない。

 

「……刀身の揺らぎ。刀、木刀、竹刀、どの道具を使っていましたか?」

 

「竹刀だったわ!」

 

「神谷さん、ありがとうございます。その人が誰かは知りませんけど、竹刀の刀身が揺らぎを起こす剣技なら空気の断層で生じる真空波の自然現象……『かまいたち』の原理に近しいと思います」

 

これは、ほとんど原作の知識を流用した言葉だ。

 

「やはり、『かまいたち』でござったか」

 

「やはり、って分かってたの!?」

 

「なんでオレに教えてくれなかったんだよ!」

 

私の説明に納得した緋村剣心に神谷さんと明神君のふたりが詰め寄り、彼は慌ただしく言い訳を考えている。『かまいたち』を生み出す剣術、さらに刀身の揺らぎも突き詰めれば豪速球のボールと同じだ。

 

「緋村さん、やってみましょうか」

 

「おろ?拙者にも出来るでござるか?」

 

「只の物は試しですよ」

 

「まあ、構わないでござるが」

 

そう言うと緋村剣心は明神君の竹刀を受け取り、ゆっくりと正眼に竹刀を構え、そのまま肩担ぎの構えに姿勢を変え、踏み込みと同時に切っ先に全神経を注ぎ込み、一気に振り下ろす。

 

───刹那、緋村剣心の握っていた竹刀を起点として凄まじい突風が生じ、神谷道場の木戸に刀傷を刻みつける。緋村剣心を含めたみんなが騒然と木戸を見つめる。

 

もっと強く踏み込めば阿弥陀流真空仏陀斬りみたいになるのかな?と思いつつ、自分の竹刀で木戸を斬った事実に両目を輝かせる明神君と、修理費に頭を抱える神谷さんに申し訳無さを感じる。

 

「今のはどういうことでざるか、糸色殿」

 

「あれはシンプル……コホン、あれは簡単に言えば緋村さんの速さを利用した『かまいたち擬き』です。原理は関節の連動率を上げ、竹刀の切っ先に力みを移して放ったというものですね」

 

簡単に言ってしまえば愚地克巳の音速の正拳突きを竹刀や真剣に置き換えたものであり、今の左之助さんでも使えるかも知れない技だ。

 

「オレもやりてえ!」

 

「コラ、前川先生の仇の剣なのよ!」

 

「仇って前川先生は死んでおらぬでござるよ」

 

また、ワイワイと騒がしくなった神谷道場の空気にほっとする。しかし、私を見つめる緋村剣心の視線は警戒する相手ではなく珍妙な生き物に変わったのは不本意としか言いようがない。

 

 

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