「ん!ん!」
「おお、中々良いぞ!」
「し、しとり、危ないから!」
ドクトル・バタフライの作ってくれた名刀電光丸を振り回して左之助さんと互角に渡り合っている彼女の身体を捕まえようとしても父親譲りの身体能力が凄すぎて彼女の身体を捕まえることは出来なかった。
ちゃんと動きやすいようにしとりは稽古用に縫った袴を履き、靴も履いているけど。
左之助さんも蛮竜ではなく掃除用の竹箒でしとりの振るう電光丸を防ぎ、攻撃を受けずに攻撃を躱し続けている。私だったらしとりが攻撃してきたことも分からずに倒されちゃいそうですけど。
「りゅーつい、せんっ!!」
「惜しいな、あと少しだった!」
「……ドクトル、あれは?」
「電光丸にインプットした剣術流派のデータだよ。私の『特典』と糸色君の『特典』を一緒に使えば現代科学の領域を越えることは容易い。さて、左之助君としとり君の遊びを見るのは後だ」
そう言うとカーテンを閉めて機械のカバンを取り出すドクトル・バタフライを見つめる。もう完成させたんですか?と言いたくなるものの、心音や浅く掠れた呼吸を確かめる彼に話し掛ける事はしない。
『心臓と肺に病気有り。体力低下、極度の弱視、脳を使いすぎによる身体疲労、重病人だ』
「知ってます。発音機能、切りませんか?」
「まあ、様式美というものさ」
お医者さんカバンから射出された注射器タイプのスポイトを手に取ったドクトル・バタフライに顎を掴まれ、口の中に甘い飲み薬を流し込まれる。
柑橘類の味をしたお薬を飲み、口許をハンカチーフで拭き取って胸を触る。このお薬で治るとはまだ断定できませんから継続しないとダメですね。
「左之助君に伝えるかね?」
「いえ、まだ大丈夫です」
「医学関連のひみつ道具は引き続き開発しておこう。もしかしたら…」
「────『特典』の遺伝ですよね。ドクトルが危惧しなくてもしとりには遺伝している様子はありませんけど、他の子に比べると賢くて身体の動かし方も分かっているように思えます」
「いや、あの子は左之助君の強さと君の賢さをしっかりと引き継いでいるだけの、とても元気で優しい女の子だ。彼女を私達の戦いに引き込むつもりはないさ」
「ありがとうございます」
しとりと左之助さんの未来はドクトル・バタフライ達のおかげで大丈夫だと安心しながら、カーテンを開けた先で楽しそうに遊ぶ父娘の姿に微笑みを浮かべる。
この子が産まれたら四人でピクニックに行って沢山の思い出を作りたいですね。いつか、うん、この身体を治してみんなで遊んでみたいです。