「糸色、不破のヤツは何処だ」
「ひゃあっ!?な、なんだ、斎藤さんですか」
しとりと一緒に左之助さん達へのお弁当を届けに向かっていた最中、低く芯の通った声で呼ばれたことに驚きながら後ろに振り返ると煙草の火を携帯用の灰皿で揉み消す斎藤一が其処に立っていた。
「もう一度聞く。不破は何処だ」
「不破さんって、あの不破圓明流の不破信二さんで良いんですよね?それでしたら夫に頼まれて荷物運びを港付近で手伝っている筈ですけど」
「そうか。助かった」
「あの、何か事件でもあったんですか?」
「ん!わるいのだめ!」
「……土方さん…土方歳三が生きていることをアイツが知っていると永倉さんが聞いていたそうだ。アイツを捕まえて土方さんの居場所を吐かせる」
う、うわあ、思いっきり口が滑ってますね。
「(こういうときは私が伝えなくて済んだと思えば結果オーライ?いや、でも斎藤さんは生きていて欲しいと願っていた人に会えるわけですし。どうやって説明してあげるべきなのでしょうか?)」
そうお結びやおかずの入った重箱を抱えたまま斎藤一の去っていく背中を眺めつつ、首を傾げたりしながら悩んでいるとしとりが斎藤一の制服の袖を掴んだ。
「ん!おじちゃん、としぞーってだれ?」
「……そうか。お前は知らないんだな」
「あ、あの、土方歳三さんにお会いできたら斎藤さんは良いんですか?」
「少なくとも会えない場所に居ることはお前の言動と態度で分かった。相変わらず嘘も吐けない阿呆が、いい加減に嘘を吐けるようになれ」
「う、ウソぐらい言えますよ。でも、子供がいるのにウソなんて言えないんです、斎藤さんだって奥さんにウソは言えないでしょう?」
「時尾に嘘など言ったら俺は飯抜きになる」
うん、愛妻家なのか恐妻家なのか分かりませんね。
北海道に転勤するときに家族で来ていることは奥さんに聞きましたけど。時尾さん、やはり怒ったら怖い人だったんですね。
「まあ、俺の話は後回しだ。不破のヤツに土方さんの事を問い質す。俺で駄目なら永倉さんと鷲塚も加えた三人でアイツを取り押さえる」
「としぞー」
「……俺達の大事な仲間だ。いずれお前にも出来るだろうが、相楽の阿呆の態度を考えるに祝言の時期はかなり遅れる可能性も否定できない」
「しとりは可愛いのでモテモテです」
「まあ、母親に似ていれば問題ない。相楽の目付きの悪さが遺伝していたら可哀想だから」
「ん!しとり、めぇいいよ!」
そういうことじゃないんだけど。しとりの可愛さに斎藤一もメロメロになっているのは間違いないですね。うん、やはり私の娘は可愛くて素敵です。