某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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修羅と壬生狼 破

港に近づき、左之助さんが見えて声を掛けようとしたとき、競歩のごとく素早い歩き方で大きな木箱を運ぶ不破信二に向かい、その顔を掴んで地面に叩き付け───いや、叩き付けられる瞬間に身体を捻り、斎藤一の左腕の関節を極めて投げ返し、へし折ろうとした。

 

「ストップ!不破さん、斎藤さんです!」

 

「ん?何だ、斎藤かよ」

 

アレは間違いなく不破と陸奥のどちらにも共通して存在する投げ技と関節技の複合型「蔓落とし」。それだけならまだ良いんです、でも漸く骨折の治った左腕を不破信二は当たり前のように狙った。

 

同じ転生者でも不破信二は他の転生者と違い、根本的に価値観はズレている。なにより彼は死ぬよりも負けることを嫌い、今も攻撃されたと理解した瞬間、相手の弱点を正確無比に狙い、破壊しようとしていた。

 

「で、何の用件だ?俺は左之助に頼まれて、荷運びしてるだけだぞ。疚しいことは何もしてねえし、変なものも拾っていない」

 

「貴様、やはりあの時に戦ったヤツか(・・・・・・・・・・・・・)ッ!」

 

「……オイ、俺を陸奥と勘違いするなよ。アイツらを倒すために不破は四百年近く生きているんだ。何よりアイツのせいで俺は……いや、違うか。で、俺を襲ってきたって事は戦いたいって事だよな?」

 

不機嫌になったかと思えば、自分を卑下し、直ぐにまた修羅の顔を顕にする不破信二と冷静さを失い掛けている斎藤一の間に布を巻き付けた刀が割り込み、二人の間合いを僅かに広げる。

 

長谷川君にみんなの視線が集まり、鬼と修羅が殺し合いを始めることを止めた。わ、私には無理な事をするなんて長谷川君は凄いです。

 

「オッサン達、ここで喧嘩するなよ。阿爛と旭が怪我したらオレは許さねえぞ」

 

「……阿呆が。糸色、ソイツが逃げないように見張っておけ。それと相楽のヤツにも聞きたいことがある、昼時で構わんから連れてこい」

 

「は、はい!」

 

そう言うと木箱に腰を預けるようにもたれ掛かり、井上君と一緒にやって来た左之助さんが斎藤一に近づき、何かあったのかを聞き始めている。

 

「長谷川君、ありがとう。これお弁当だから、みんなで仲良く食べてね?」

 

「おう。景も気を付けろよ、このオッサン達は殺し合いを喧嘩と勘違いしてるみてえなバカだから平然と殺し合いを始めるぞ」

 

「明日郎、俺は喧嘩じゃなくて強者と戦えれば良いだけなんだよ。背筋の凍りつく恐怖、その時だけが俺という不破は充実していられるんだよ」

 

「な?」

 

まあ、そういう一族ですからね。

 

「しかし、永倉のオッサンに話したのが不味かったか?酒の席だから忘れてると思ったが、アイツらと戦えるなら万々歳だけどよ」

 

「……一回、負けたらどうですか?不破さんのせいで早まるかもしれないんですよ?」

 

「あっ、そうか。そうだった。ごめん」

 

余り怒るのは得意じゃないですけど。

 

今の不破信二の言葉は良くありません。大事な人に会える可能性を利用して、戦おうとするなんて酷いことです。ちゃんと反省して、しっかりと『ゴールデンカムイ』の開始まで二十年近くあるんですから、上手く誤魔化しながら斎藤一達と話し合って下さい。

 

 

 

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