「君は何を考えているんだ!」
ドクトル・バタフライの研究所へとひみつ道具や「キテレツ大百科」の発明品の設計図を届けるため、しとりと一緒に五十分ほど掛けてやって来た研究所の扉を開ける前にドクトル・バタフライの怒声が聞こえてきた。
あの土方歳三生存を告げる事件から一日しか経っていないのに、もう不破信二はドクトル・バタフライに伝えに来たのかと驚きながら、しとりの「ん!けんかだめ!」の一言で我に返り、彼女の事を抱き上げる。
「しとり、静かにしててね?しーっ、ですよ?」
「しぃーっ」
私の真似をして口許に人差し指を当てるしとりの可愛さに微笑んでしまうものの。ゆっくりと廊下を歩き、研究所の奥に進んでいくと不破信二に詰め寄っているドクトル・バタフライの姿が見えた。
「悪かったって……」
「悪い云々はこの際どうでもいい。土方歳三の事を生存を伝えてしまったことで、『物語』の重なる時代が早まる可能性だってある。何より糸色君の負担を考えたまえ!この馬鹿者が!!」
「糸色君ってアンタも糸色が気になるのかよ」
「そうではない。彼女に与えられた『物語』を繋げる能力は彼女の『特典』と同じく身体に多大な負担を掛けている。君にだけは伝えておこう」
どこか真剣さを纏った声色に変わる。
しかし、薄々想像していたけど。
私の身体はもうボロボロになっているんですね。実感が湧かないけど、きっとドクトル・バタフライは私を助けてくれるために、何度も何度も実験を繰り返しているんですよね。
「糸色君の身体は第二子を出産する頃にはもう体力は残っていない。例え産めたとして助かる見込みも無に等しい。───現時点でさえ彼女が動けているのは、ススハムに頼んで授かった神酒の肉体の強さを高める効能と核鉄の生命維持の恩恵によるものだ」
「(そっか、私って死ぬんだ)」
この子を産んだら終わりになっちゃうんですね。左之助さんとの約束も破って、しとりやこの子の成長していく姿を見ることは出来ないんだ……。
「……やだッ、いやだなぁ゛…ッ…」
設計図を地面に落としながら廊下に座り込み、しとりの事を強く強く抱き締めてしまう。まだ、いっぱいみんなと話したいことが沢山あるのに、この子とも沢山の思い出を作ってあげたいのに、ごめんね。
「母ちゃん、どうしたの?おむねいたいの?」
「うぅん、大丈夫だよ。もうちょっとだけ…」
落ち着いたら、離すから。もう少しだけ、もうちょっとだけ貴女の温もりを私に貸して、そうしたら私はいつものお母さんに戻るからね。