某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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早まる物語 急

研究所の一件後から二日ほど経過した頃。

 

「まっ、まって、コホッ、ゲホッ…!」

 

私はドンと親分の後を追っていくしとりを追い掛けて、人混みが少なくなっていく路地に不安を抱きながら路地の奥の奥へと進んでいた、そのときだった。

 

ピタリ、と、しとりの足が止まった。

 

「し、しとり、お家に帰ろう?」

 

「……母ちゃん、あれなに?」

 

そう言ってしとりの指差す方に視線を向けると注連縄を巻き付けた巨大な大樹と、その木の根本に突き刺さるように古びた刀が突き刺さっているのが見えた。

 

いや、絶対に厄ネタじゃないですか。

 

「ん。母ちゃん、あれよんでる」

 

「え、えぇ?」

 

やっぱり妖刀の類いじゃないですかと愚痴を言いたい気持ちを押さえながら、しとりが勝手に近づかないように抱き締めて、ゆっくりと古びた刀を見つめる。

 

妖怪に関わるものなのかしら?

 

それとも私達が生まれる前に北海道にいた転生者の残した刀、そう考えるのが妥当だけど。しとりを呼んでいる理由が分からない。

 

「……ドクトル、居ますか?」

 

『何かね?』

 

ヒラリと宙を舞う金色の蝶に話し掛け、目の前に存在する転生者のものらしき刀の事を伝えるとチャフの電話越しに唸るような声が聴こえてきた。

 

『糸色君、余り近づかないように。ただでさえ君の身体は弱っているんだ、その刀が意思を持っていれば一瞬で君の精神は乗っ取られてしまうことになる』

 

「ん!とった!」

 

「え?ああ、しとりが取っちゃいました」

 

「……きたないからいやない」

 

「あ、うん」

 

『まあ、当然の反応ではあるね』

 

ぽいっと捨てられた刀を何だか可哀想だなと思いつつ、ドクトル・バタフライに忠告されていた様に下手に触ることはせず、しとりの着物の袖を襷で縛り、水筒の水を手に掛け、携帯用に小さく切っていた石鹸を使って、しとりの手洗いをお手伝いする。

 

アルコール消毒もしたいけど。家に帰ってから、うがいと一緒にしましょう。ふと古びた刀を見ると、見つけたときと同じ場所に突き刺さっていた。

 

そこが定位置なのかな?

 

「ドン、親分、帰りますよ」

 

私の声に刀を見上げて毛を逆立てていたドンと親分の二匹はトタトタとしとりを抱っこする私の前後に分かれ、何かを警戒するように低く唸り声を出している。

 

また、巻き込まれたみたいですね。

 

「個魔の方、先程の刀が何か分かりますか?」

 

「いや、知らない。ただ、影の私じゃ触れることが出来なかったから生きている人間か実体を可視化できるタイプの妖怪でなければ持てない感じだった」

 

やはり、そういう類いの妖刀ですよね。

 

しとりは触れてしまったけど、何かに取り憑かれている雰囲気は無いですし。一先ずは安心できますが、帰ったらしとりには危ないものには触らないようにまた教えて、左之助さんにも注意して貰いましょう。

 

 

 

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