あの妖刀も戦骨が倒した妖怪の骨か牙を素材として鍛えられた刀なのは何となく分かるけど。左之助さんじゃなくて、しとりを選んだ理由が気になる。
まだ、小さな子供に何をさせようと?
戦骨と過ごしたのは一週間にも満たない数日ほど、それなのに妖刀を造って明治時代まで遺してくれただけじゃなく北海道まで運んでくれた事に嬉しさはあるけど。やはり戸惑いを抱いてしまう。
「個魔の方、どうしましょうか」
「私に聞かないでほしいね。嬢ちゃんに与えるって事は妖逆門の撃符に成り得るアイテムだ。今のところ『げぇむ』が始まる心配はしなくていいけど、嬢ちゃんのエースはすねこすりだ」
「ドンは普通のクズリなんですね」
チラリと座布団の上でしとりに貰ったハンカチーフを首に巻いて眠っているクズリのドンを見る。普通のクズリと個体差は無いものの、やはり知性はかなり高くて人間の言葉を理解しているように思える。
「母者、ドンは長生きすると思うよ。少なくとも長生きした動物は妖怪変化することが多い、そうなってくれればドンは嬢ちゃんの撃符の仲間に加わる」
「妖逆門、私は参加資格はない筈なのに貴女の事が見えるのは何故なのかしら?」
「私は嬢ちゃん以外に話し相手を作ることが出来たのは嬉しいけど。母者に迷惑を掛けているなら、私は出てこない方が良いか?」
「ナイーブになるのはダメですよ」
そう言って個魔の方に紅茶を淹れ、縁側に寝転んで絵を描いているしとりを一緒に眺める。彼女の目の前に立つ、そう二足で立っているのだ。
すねこすりの親分はしとりのために二足になり、絵のモデルをやってくれている。まだ人の言葉は話せないけど、しとりが大好きになった理由も良く分かります。
親分は優しいのです。
「さて、母者はもう今日は休んどきな」
「え?でも」
「顔色悪いヤツは布団でお休み。グッドナイトを楽しみたまえよ、なんてね」
「……フフ、ドクトルの真似ですね。似てますよ」
彼女の声真似を笑いながらも立ち上がり、しとりに「お母さん、少しお休みしますね」と伝えて寝室に歩き出すと後ろからしとり達が着いてきて、なんだかブレーメンの音楽隊の気分になる。
動物はクズリとすねこすりだけど。
「ん!しとりもおふとんはいう!」
「コラコラ、嬢ちゃんは元気でしょう?」
「母ちゃんあっためる!」
「子供体温、ポカポカしますから好きですよ」
いつも一緒に使っている布団を敷き、枕の位置を調整してしとりを布団の中に招くとドンと親分も自分の寝床を寝室に運び込み、丸まって眠り始めた。
「こりゃあ父者が帰ってくるまでお休みだね」
まあ、そういう事もありますよ。