「やあ、景。久しぶりだね」
「姿お兄様、鎌足お義姉様もお久し振りです」
「普通に鎌足で良いのに律儀よね」
「……何でどっちも女になってんだよ」
お二人と挨拶を交わす私の隣で困惑の声を漏らす左之助さんの指摘に姿お兄様は「たまには、そういうこともあるさ」と穏やかに笑っている。
「今日はどうしたんですか?」
「ちょっと面白いものを見つけてね」
そう言うと姿お兄様は刀の柄を取り出して、私と左之助さんに差し出してきた。「へ」の文字に曲がった柄、滑り防止用の燻革を用いた革巻き、目貫を昇り龍の拵え、一際目を惹くのは鍔の形状だ。
龍の頭を模して造った鍔。特定の動きや指の握りを意識しないと開口しない仕掛けを施しているけど。肝心の日本刀がなければ無意味な代物ですね。
左之助さんの持つ柄は龍ではなく鬼の牙を彷彿とさせる仕掛け鍔をしており、どことなく見たことのある物だと思った瞬間、頭の中に「BLOOD-C」が浮かんだ。
そういえば、どちらも更衣神社の御神刀の見た目をしていますね。こんなものを造るのは絶対に戦骨だけでしょうが、なぜ柄だけを?
「景、それはあげるよ」
「……刀は使えませんよ?」
「しとりとお腹の子に叔父からの贈り物だ」
「しとりは女の子だぞ、姿」
「刀身無しの刀だってたまにはあるものさ」
姿お兄様も怪しい動きをしますね。
しかし、いつも私の安全を考えてくださる優しいお兄様なので悪いことはないのでしょうが、しとりに龍の頭や鬼の牙を彷彿とさせるものは違うのでは?
「ん!しとりの!」
「……まあ、しとりが喜ぶのなら」
両手で握っても大きな刀の柄を握り締めるしとりを見ながら左之助さんに「もう一振りの刀の柄はどうしましょうか?」と問い掛けると「姿に預けておけば良いだろ、本人に渡してもらえるほうが嬉しいもんだ」と言ってくれた。
「ああ、それともう一つ言伝があるんだ」
「はい。なんでしょう」
「孫が見たいので北海道に行きますだそうだよ」
「お父様とお母様ですね。───左之助さん、しとりが孫フィーバーした両親の毒牙に掛かりそうで怖いです、どうしましょう!?」
「「「孫ふぃばぁ?」」」
「……コホン、孫の可愛さにはっちゃけた両親の毒牙に掛かりそうで怖いです、どうしましょうか?」
孫フィーバーって、まだ無い言葉だったことを思い出して訂正しながら鎌足お義姉様は「ご両親に挨拶するの楽しみだわ」と楽しそうに笑っている。
お父様とお母様は懐が底無し沼のごとく深すぎるので姿お兄様の変わってしまった体質については普通に受け入れてくれますね。