「く、くそぉ!オレは佐之助だぞ!」
「阿呆が。警官に楯突く馬鹿がいるか」
阿呆と馬鹿を連続して言う斎藤一と、未だに自分を左之助さんだと言い続けている自称・日本一の喧嘩代行屋の相良佐之助の名刺を三島兄弟に差し出す。
「相楽先生!」
「こんにちはですね、三島君」
「はい!あ、えと、あちらは?」
「知り合いじゃないです。多分、東京の喧嘩屋界隈で負けて左之助さんの名前を騙って、この北海道で成り上がろうとしてたんじゃないですか?」
「流石は相楽先生ですね!!」
私を褒める三島兄弟の声に気が付いた恰幅の良い喧嘩代行屋の男の人が私に駆け寄ってきた瞬間、分銅が彼の顔を強打し、鞘に収まった刀が彼の額に直撃して、そのまま弾き倒した。
「こんなところで偶然ね、景ちゃん♪︎」
「やあ、危なかったね。景」
「鎌足お義姉様と姿お兄様まで」
「ん!おじちゃ!かまたい!」
「しとりちゃんも久し振りねえ」
ブンブンと手を振るしとりに目線を合わせる鎌足お義姉様の優しさに「ありがとうございます。助けてくれて」とお礼を言いつつ、分銅を袖の中に仕舞う彼女の手慣れた動きに流石は鎖鎌の使い手と感心してしまう。
それにしても緋村剣心じゃなくて、左之助さんを選んだ理由も気になります。多分、海外逃亡の話を聞いて使えると思った程度のことでしょうけど。
私の大切な人の名前を使うのはやめて欲しい。
「おい、馬鹿。コイツが誰か知っているか」
「あ?だれだよ、その女」
「本物の相楽左之助の妻だ」
「……フフ、改めて言われると照れますね」
ポッと頬を染めながら斎藤一の「相楽左之助の妻」というワードに一瞬止まり、だんだんと青ざめていく喧嘩代行屋の人を見る。
「な、なんでそんなヤツがここに!?」
何でと言われても、そうですね。
最初はお友達の父親探し、そこから剣客兵器、そうして気が付けば白面の者、戦国時代の奈落、フェイスレスなど各物語のラスボスと邂逅し、約一名は初恋拗らせストーカーから人妻NTRも辞さない変態さんにグレードアップしてしまったわけですけど。
やはり変態さんは怖いです。
「まあ、色々と事情はありますね」
「お前が俺を騙るヤツかァ?」
「ん!父ちゃん!!」
にっこりと素敵な笑顔で喧嘩代行屋の頭を鷲掴みにして現れた左之助さんにブンブンと手を振るしとりに、左之助さんはカッコいい笑顔を向ける。
「ウチの女房と娘を怖がらせたみたいだからな。テメェは死なない程度の憂さ晴らしの相手になってくれ。じゃあ、また後で来るから待っててくれ」
そう言うと左之助さんは何やら騒いでいる偽者の左之助さんを引きずって、どこかに行ってしまいました。左之助さんが人気者で不安になります。
多分、発端は私の錦絵や春画ですけどね。