「結局、アレは何だったんだ」
「斎藤さん、他人の名声に肖って自分も利益を獲ようとする人もいるんです。ほら、私の渡米中に出回っていた『うしおととら』の続きもそうです」
「嗚呼、耳が有ったり無かったりした奴いたな」
いえ、それは原作通りです。
書き忘れている訳ではなく、原作の流れを遵守してしまうと自然とそうなってしまうんですよね。とら様の耳の有無は未だに議論もありますし。
「しかし、相楽のヤツ遅いな」
「最近、普通の喧嘩をしていませんでしたから」
「……確かに、俺の仕事も
「そ、そうなんですね」
カタカタカタカタカタカタカタと激しく震える刀の柄を握り締めて押さえつける斎藤一。まだ、竜骨精とは打ち解けられていないようです。
犬の大将の好敵手の一人ですから、そう簡単に仲良くなるのは難しいとは思うけど、斎藤一も左之助さんのように雷撃を纏う可能性もあるのに勿体ない。
「姿、お前も逃げるなよ。如何に糸色家の人間だろうと剣客兵器に加担していた事実は消えない。警察署で事情聴取を受けるか、樺戸集治監で半生を過ごして生きるのかを選ばせてやろう」
樺戸集治監。
おそらくまだ土方歳三の幽閉されている監獄の名前の登場に驚きつつ、私と鎌足お義姉様は姿お兄様を庇って守るように隠す。お二人と比べたらかなり小柄な私でもギリギリ身体の半分ぐらいは隠すことはできます。
「私の大事な兄です、やめて下さい」
「私の旦那を取るなら容赦しないわよ」
「ははは、モテモテだね」
自分のピンチだというのに楽しそうに笑う姿お兄様に向き直って注意しようとした瞬間、姿お兄様の真後ろに立つ左之助さんと目が合った。
「お前はいい加減に妹離れしろ」
「断る。僕の人生は鎌足を一番に置き、次手で景なんだ。両親も大事だけど。愛する人を一番に愛するのは当然の事だと思うだろ?」
「「…………」」
そう言って堂々とする姿お兄様の言葉に左之助さんと斎藤一の二人は納得してしまった事を悔しそうにしている。愛する人を全力で愛するのは当然であり、当然と思ってはいけない。
愛するから人の心は揺らめき、どうやって伝えるのかが重要になってくるんです。私も左之助さんに好きですや愛していますとはお伝えしているけど。
その倍の哀の囁きを受けるばかりです。
「チッ。保留にしておいてやる」
そう言うと三島兄弟を連れて、また料理処のお店に入って行ってしまった。
「オレ達も帰るか」
「ん!かえう!」
「それでは、失礼します」
姿お兄様と鎌足お義姉様にお別れの言葉を伝えて、しとりを挟むように左之助さんの隣を並び、しとりと手を繋いで一緒の歩幅で歩く。