ワイワイと喜楽のまま騒ぐ家族のやり取りを眺める傍ら私の身体は突然の出来事と穏やかとは言い難い、少しだけ疲れてしまう空間に気づかれないように溜め息を吐いて、台所の隅に移動して深呼吸を繰り返す。
姿お兄様もそれとなく中庭でしとりと遊ぶように誘導してくれたけど。少しだけ、本当に少しだけ気持ち悪くて気分が悪くなる。
「景、大丈夫か?」
「は、はい、大丈夫です」
中庭から見えない戸棚の影に隠れて座り込んでいた私の前に膝を落として座り、優しく抱き締めて背中を擦ってくれる左之助さんの問いかけに答える。
やはり無理を強いるのはダメですね。
適度に落ち着ける場所に移動して安静にしていないと……でも折角、みんながしとりのために集まってくれたのに申し訳ないです。
そう自分の不甲斐なさと弱った身体に情けなさを抱く私を抱き上げ、左之助さんは何も言わずに寝室へと私を運び、布団に寝かせてくれた。
「後はオレが相手するから休んでろ」
「すみません、左之助さん」
「いや、ウチの親父もあんだけ騒いでんのが悪いんだ。それに景が早く元気になってくれたほうがしとりも安心できるからよ」
そう言うと布団に眠る私の頭を撫でると立ち上がり、彼は寝室を出ていってしまった。愛されて嬉しい反面、負担を掛けてしまう自分に溜め息を吐く。
「ゲホッ、ケホッ…ごほッ……ッ…」
上半身を起こして黒ずんだ血を手のひらに吐き、ハンカチーフを使って口許と手の汚れを拭き取り、明るいのに布団の中に潜って静かに過ごす。
左之助さんは上手く誤魔化しているかな?とかしとりは私が居なくて泣いたりしていないかな?とか色々な事を思いながら瞼を閉じて、コヒュー、コヒュー、と掠れた自分の浅く不安定な呼吸の音を聞く。
「(自分の悪いところを見れたら良いんですけど。それはもう超能力の部類になりますから、私には絶対にあり得ないですね)」
懐に仕舞っている核鉄の熱は日に日に増しているけど。火傷する事はなく、むしろ私が生きるために熱を分け与えてくれている。
五年で付喪神になるのかしら?なんて考えながら、寝室と廊下を隔てる戸の向こう側をうろうろとしている足音が聴こえる。
小さな裸足の音、これはしとりですね。
ゆっくりと上半身を起こして襟元を正して、いつでもしとりを出迎えられるように準備し、眼鏡を掛けてしとりの名前を呼ぶ。
「しとり、入っていいですよ」
「……ん。だいじょーぶ?」
「フフ、心配させてごめんね。でもお母さんは大丈夫ですよ、しとりが来てくれましたから」
「ん、ん!」
私の側に寄ってきたしとりは座るなり、直ぐに私の布団の中に潜り込んできた。つまり、これから左之助さんだけでお母様達の相手を?
まあ、少し疲れたので仮眠を取りましょうか。