結局、両親にもバレてしまった。
姿お兄様も黙っていたことを怒られたのか。普段なら傷を負わない顔に幾つも痣を作り、お父様とお母様の二人の後ろの壁際に座っている。
「どうして、黙っていたんだい?」
「療養のために北海道へ移っているのなら、最初に伝えて貰えれば押し掛けたり……いえ、後だしの言葉に意味なんてないわね」
苦しそうに顔を歪めるお父様とお母様に申し訳なく思いながら、ベッドの中に潜り込んで眠っているしとりの頭を優しく撫でてあげる。
不安や恐怖、恐れ、焦り、罪悪感、虚しさ、苦しみ、色々な負の感情を入り混ぜられた私の言葉を吐き出すには、もう随分と時間を掛けてしまった気もする。
「ごめんなさい」
「謝って欲しい訳じゃないんだ。僕達は景が無事に生きていてほしいんだ。例え病に伏しても治るなら、なんだってして生きていてくれるだけで良いんだ」
そう言って私の手を握るお父様の切実なお願いを受け止め、頷くことは簡単だけど。もう分かっている事だ、お腹の子を産むときに、きっと私は……。
「景、貴女の考えは大体分かるわ。自分はどうせ死ぬんだからとウソを言おうとしたわね?」
「ッ、どうしてそう思うのですか?」
「私が母親だからよ」
「……フフ、やっぱりお母様には敵わないなあ」
少し言葉が崩れてしまい、口許を押さえながらも愛して貰っているという事実の嬉しさに口角が緩み、嬉しさと悲しさが混同している。
私は本当に幸せ者です。
「直ぐに実家に帰ろうと言いたいが、景は療養のために北海道に来ているし。僕達も北海道に……というのは流石に難しいか」
「流石に景の身を案じるなら北海道に移ろうなんて考えない方が良いよ。それに明治政府も何か探るみたいに動いている、集まりすぎるのは良くない」
「お前が言うな。馬鹿者」
ベシン!と姿お兄様の頭を叩くお母様にビックリしながら、なんだか信州の実家にいたとき、まだまだ私が子供だった頃を思い出してしまった。
私も左之助さんやしとり、お腹の子とこんな風にやり取りが出来る家族になりたいです。今も幸せだけど、もっともっとと高望みしている。
「…んむぁ…」
「おはよう、しとり」
小さな顔を緩めて、アクビをするしとりの事を撫でてあげながら干渉気味な母親は嫌われるけど、私は大丈夫よね?と未来の事を想像して口の中が鉄臭くなる。
ハンカチーフを取り出して口許を押さえながら、しとりをお父様……いえ、やっぱりお母様に預けて口許の汚れを見えないように拭き取る。