一旦、両家とも帰ることを選んでくれた。
これからしっかりと身体を休めて回復させるという約束を交わしたけれど。来年の今頃には家族が増えるから、そのときは立ち会ってほしい。
と、そう私は願っている。
「ドクトル、いつ私は家に帰れますか?」
「もう暫くは安静を取るために研究所だ。不破君は女傑族の里で武器を手に入れるために出向している。それまで居て欲しいと言うのが本心だがね」
お医者さんカバンの物とは違う。
本物の聴診器を使って私の心音や身体の中の音を診察するドクトル・バタフライの手の動きは止まり、はだけていた着物を襟元を綺麗に整えて着直す。
カルテに私の情報を書き記しながらドクトル・バタフライは「やはり病気の進行は進んでいるが、少しずつ回復の兆しも見えているよ」と言ってくれた。
ただ、そう言っているだけで私の身体は回復には向かっていない。とても良いウソなのでしょうが、私の「特典」の事を忘れていますよ。
「フフ、そうなんですね」
「嗚呼、そうだとも。それともうこの部屋に入室してかまわないよ」
「ん!!おはよー!!!」
「おはよう、しとり」
ばぁん!と勢い任せに内開きの扉を押して入ってきたしとりは小走りでベッドの縁に飛び付き、スリッパが宙を舞う最中、モゾモゾと小さな身体を動かしてベッドの上に登り、私の胸元に抱き着いてきた。
「コラコラ、危ないじゃないか。little Girl」
「がぁるじゃないよ?」
「ハッハッハッ。確かにそうだったね、しとり君も立派なLadyの一人だからね。マカロンをプレゼントするから、どうか私を許してほしい」
「まかろん!」
そう言えば以前にも貰いましたね。
金色の蝶に運ばれてくるマカロンにキラキラと目を輝かせるしとりの可愛さを描きたいのに、画材は家の仕事部屋に置いたまま、左之助さんも暫くは描くことを休むように言っていたけど。
しとりのことを描きたい。
「ミルクティーとココア、コーヒー、しとり君は何が飲みたいかな?」
牛乳やココアの粉末、コーヒー豆、角砂糖、フワフワと蝶に掴まれて動くそれを見上げながら、一生懸命に考えているしとりの事を優しく撫でてあげる。
「ん!えと、えとね」
「フフ、ゆっくりで良いんですよ?」
「ここあ!」
「お砂糖さんは幾つかな?」
「いっぱい!」
「では、一番美味しい数を入れてあげよう」
チャフを擦り合わせて起こした熱を使い、ティーポットを温めたドクトル・バタフライは大きなマグカップにココアの粉末を投下し、ティースプーンを使って優しく混ぜ、角砂糖を四つほど入れた。
「お楽しみを。お姫様」
お髭がカッコいいから完璧なダンディズム!