左之助さんが月岡津南を連れて帰ってきた。
「オレの嫁だ。良い女だろ!」
「年上が趣味だったのか、お前」
私の事を良い女だと自慢する左之助さんに恥ずかしさと嬉しさを半分ずつ感じながら、月岡津南の言葉にやっぱり老けて見えるのかとショックを受ける。
どうせ、私は老け顔ですよ。
「克、お前より年下だぞ」
「なにっ!?」
「……泣きますよ、私も」
「す、すまん。女性に酷いことを言った」
私の年齢に驚く月岡津南に脅しじみた言葉を言うと流石に悪いと思ってくれたのか。素直に謝ってくれたけど、左之助さんは悪戯に成功して喜んでいる。全く私だから良かったですけど、他の人にはしないでほしいわね。
チラリと月岡津南を見る。
やはりギラギラと怪しげな光を宿す眼光に身体が竦み、彼の事を怖いと思ってしまう。でも、私の近くには左之助さんがいる。
それに月岡津南は左之助さんが赤報隊だったとき、苦楽の時代を一緒に生きてきた大切な友達だから私が怖がる必要は何一つ無い。
「どうぞ」
「ああ、どうも」
二人分の湯呑みと急須をお盆に乗せて差し出し、お摘まみにと作っておいた醤油を塗って乾かした煎餅を置き、左之助さんの隣に腰掛け、ゆっくりと座り直して月岡津南の目の前に正座する。
「初めまして、まだ祝言は挙げていませんが相楽左之助の妻の糸色です」
「ちなみに十五歳だ」
「左之助さん?」
「一応、言っておかねえとだろ?」
流石に何度も年齢で揶揄うのは酷いという意味を込めて、ムッとしながら視線を向けると左之助さんは月岡津南が半信半疑だから仕方なくだと言ってくる。
私がいるのに赤報隊の話をするのだろうかと疑問を抱きつつ、左之助さんと月岡津南に視線を向ける。……なんで、ふたりとも黙ったままなんだろうか。
「左之助、お前の伝えようとする意図は分かる。だが、オレの考えは変わらん。それに、もう若女房のいるお前を此方に引き込むつもりもない」
「それなら…!」
「───十年だ。あの日からずっとこの日のためにオレは生きてきた。今さら後に退ける様な場所にはオレは立ってねえんだ。日向を生きるお前は、これからも若女房と仲良く暮らしてな」
き、聞いていてもいい話なのかな。
私の不安を他所に煎餅を一つだけ齧り、バリボリと噛み砕いた月岡津南は玄関へと向かい、そのまま長屋の外に出ていってしまった。
「悪いな、糸色。今夜も帰れねえかも知れねえ」
「……あの人は、左之助さんにとって大切な友達なんですよね。だったら私に謝ることもありません、しっかりと引っ張り出して上げて下さい」
「嗚呼、必ず止めて来る」
そう言うと左之助さんは部屋を飛び出し、月岡津南を追いかけて行ってしまった。男の人の友情って、どうして胸の奥がトキメキを感じてしまうのかしら?