少しだけ体力も回復して、動けるようになったけど。ヴィクター・パワードのところに行けるほど身体の疲労感と倦怠感、気持ち悪さは治っていない。
左之助さんにも地下施設のヴィクター・パワードの事をドクトル・バタフライが伝えてくれたおかげで、誤解?になるのかは分からないものの、私を独占しようとする左之助さんは謝ってくれた。
アレには、私も非がありましたからね。
「景、林檎貰ってきた」
「わあ、阿部さんの農家のヤツですね」
「擂り下ろして食えば食べやすいって言ってたからよ、台所ですり鉢借りてきた」
卸し金でやるものでは?と疑問を抱きつつ、皮ごと擂り潰し始めた左之助さんを止めることが出来ず、眼鏡を外してレンズの汚れを拭き、ふう、と吐息をこぼす。
「今日も探検に行ってしまったしとりが帰ってきたら、食べたいとおねだりするかもしれませんね。その時は一緒に作りましょうね」
「ん。おう」
二個、三個、次々と林檎をすり鉢に投下していく左之助さんの行動に段々と冷や汗を流してしまう。そ、そんなにいっぱい食べられませんよ?
「ほれ」
「えっ」
ずいっと差し出された擂り下ろし林檎を受け取り、すり鉢と左之助さんを交互に見比べ、木製のスプーンを使って口の中にシャリシャリした食感と、ベタベタした謎のペースト状になったものが混同している。
林檎の他にも何か入れている?
思わず、目に意識を集中してしまった。
林檎、砂糖、でん粉、イモ……これ以上は止めておきましょう。おそらくドクトル・バタフライが使っていたときのものが僅かに混ざったのでしょう。
決して、イモリの乾物や鹿の肝、猪の肝、ウサギやクマなんていうものは入っていないのです。チタタプかもしれませんが、私は見ていない。
「……りんご、おいしいです……」
「そうか!それなら良かった」
「左之助さんも食べますか?」
「お前のために作ったんだけどな」
「……あーん」
スプーンで掬い取った擂り下ろし林檎を差し出すと左之助さんは何の躊躇もなく頬張りながら「しとりに見られたらどうするんだ」と言動と表情が合っていない事を言うので、続けるように擂り下ろし林檎を与える。
私はチタタプよりつみれ汁が好きです。
「左之助さん、ベッドに座ってくれた方が食べさせやすいのでこっちに来てほしいです」
「何か押し付けようとしてねえか?」
「え、信じてくれないの?」
「信じるに決まってるだろ」
私の言葉に即決してくれた左之助さんに嬉しくなり、次々と林檎を差し出すと左之助さんは戸惑いながらも最後まで食べきってくれた。
林檎、今度は卸し金を使いましょうね。