ドクトル・バタフライの計らい……というよりかは私の我が儘でヴィクター・パワードと二度目の邂逅を迎えている。ただ、エネルギードレインを回避するために、私の身体に三十個近く核鉄を巻き付け、車椅子に座った状態で話しているのだけど。
百個の内の三十個。
どれだけドクトル・バタフライが錬金戦団に狙われているのかがよく分かる。もしかしたら、武藤君達の過ごす未来の世界では
「お前も武装錬金を使うのか」
「使えません。ドクトルに借りている核鉄は余命幾ばくかの私を繋ぎ止めるためにお借りしているだけ、役目を終えればいずれ彼に戻ります」
「……その余命幾ばくかのか弱き生命を吸い上げる私の傍に寄る理由は何だ。ホムンクルスになりたいか?それともこの恐ろしい身体になりたいか?」
「いいえ、どちらでもありません。少しだけお話をしようと思って来ただけです」
私がそう言うと怪訝そうにフラスコの中で傷を癒やしているヴィクター・パワードは「死ぬ前に帰ることが条件だ」と呟き、私はそれに頷いた。
「ありがとうございます」
「それで何が聞きたい」
「ドクトルと出会ったお話がどうしても気になったんです。あの人、自分の事を教えてくれないのに私の事は詳しく知っているんですよ?」
「成る程、それはズルいな」
「そうでしょう」
「───私と彼が出会ったのはニホンが明治という時代を迎えたとき、錬金の戦士に加えてホムンクルスの軍勢と戦い、傷付いていたときだった。今のように髭は生えていなかったがな」
フラスコの中で笑うヴィクター・パワードの笑みが消え、私の後ろに視線を向けている。なにかあるのかな?と車椅子を動かして振り返ると女の子がいた。
「ママ、パパが浮気しているわ!!」
「待て!?アレキサンドリアに、母さんに誤解を与えるような事を報告するのはやめてくれ!!ヴィクトリア、聴こえているだろう!」
…………ああ、良かったです。
ドクトル・バタフライが奥さんと娘さんを助けて、ここに匿っているんですね。そういえば不破信二と口論になっているときに来ていたMrsにもものすごく見覚えはありましたけど。
「やれやれ。騒々しくて駆けつけてみれば糸色君も顔色が悪くなっているじゃないか。すぐに病室に戻って安静にしていなさい」
そう言って地下室に入ってきたドクトル・バタフライはダンディズムの窮まった普段とは違う、白衣とゴーグルを身につけている。