「オッサン、地下室なんて作ってたのかよ」
「まあ、やむを得ない事情もあるのでね」
オレの言葉に少し言い淀む蝶野のオッサンの背中を追って長い階段を下り、蝋燭台を立てた通路を進んでいく程に身体が重みを増し、一歩進む毎に身体が苦しくなるような感覚に襲われる。
「今日も来てくれたのか。蝶野天爵」
「友人のお見舞いに来るのは当然だろう。君にも紹介しておこう、糸色君───いや、相楽景君の夫の相楽左之助君だ。君と同じく錬金戦団の不始末を無関係の家族に背負わされている者だ」
「そうか。君が、例の東国最強の戦士か」
巨大な瓶の中に沈んだ蛍火色の長い髪を揺らし、オレの事を悲しげに見下ろす熱く熱した赤銅色の肌に夥しい傷を負った男を見上げる。
和尚や蒼紫はオレよりデカいが、コイツはその二人よりもデカく式尉や戌亥番神よりも分厚く鍛え上げられた無駄を一切省いた筋肉の鎧を纏っている。
「オッサン、コイツは誰だ。あと景の話していた男ってコイツだろ、後で問い質すから?」
「HAHAHAHA!!!」
「誤魔化すの下手くそかよ」
「天爵はそういう男だ。サガラ・サノスケ」
そう言って瓶の中で笑う男の言葉に、米国でもそうだったかと渋々と納得する。が、オレの景を知らない男と密会させていたのは許さん。
「……天爵、お前の知り合いは執着心や闘争心が強いヤツばかりなのはどうにかならないなか?見ている分には構わないが、あの少女には酷だろう」
「ヴィクター、それは違うさ。糸色君はむしろ相手の執着心が高ければ高いほど『愛情』と捉える、とてもユニークな感性の持ち主なんだ」
「まるでオレが景を縛り付けてるみたいな言い方するなよ。オレは景の散歩も買い物も付き添ったりすることはあるが毎日じゃねえぞ」
「でも糸色君の手足を見て、たまにほの暗い感情を露にしているのは何故かね?」
「それはそれだ」
確かに景の手足を縛って閉じ込めておきたいと思ったことはあるが、アイツは友達を大切にするから嬢ちゃんや巻町に会えねえと寂しがる。
そういう気持ちにさせたくないから、オレは景を閉じ込めるのは我慢している。確かに、ごろつき長屋に居たときは四六時中一緒にいた気もするけどよ。
今はしとりも居るから三人で一緒だ。
「───と。まあ、彼はこういう男だ」
「成る程、これが類友というものか」
「うむ、私達は類友だ」
「一括りにすんなよ?まあ、女房を大事にしてるってんなら類友っていうのは間違いねえが……さっきからオレ達を覗いてる嬢ちゃんだれだ?」
しとりより背丈も大きいし、年上か。