極めて美しい景色や眺めを意味する言葉。
糸色景の見る世界は、果たして美しいのだろうか。
「左之助さん、お話どうでしたか?」
「……まあ、仲良く出来ると思う。ただ、景は無闇に近づくなよ?魂を吸うみたいな事を止められねえらしいからな。核鉄を持ってようが持ってなかろうが、オレと一緒にいるとき以外はダメだ」
「はい。分かりました。でもしとりはエネルギードレインを受けてもピンピンしていたんですね。やっぱり子供だから体力が有り余っているんでしょうか?」
「景とオレの子供だからな、賢くて強い女になるのは間違いないが剣路と天兵の餓鬼共に嫁にやるのは絶対に嫌だ。腹の子も女なら絶対に二人とも嫁がせねえ」
それはもう箱入り娘になってしまうのでは?と考えて、色々な物事に興味を持っているしとりを家の中に縛り付ける事は難しいと思う。
とはいえ。左之助さんがとてもしとりを大切に思っている事を知れて私は嬉しいです。ただ、あまり過保護になりすぎると反抗期に突入して、悪い子になっちゃうかも知れませんね。
「(私は反抗期はあったのでしょうか。……いえ、そもそも反抗期になる前に家出して、東京にやって来て、左之助さんと夫婦になりましたから)」
あれ?それだと私が悪い子になりますね。
「また変な事考えてるのか」
「変な事を考えているわけではないですよ?もしかしたら私は悪い子だったのかと人生を振り返っていたんです。ほら、十三のときに家を飛び出して、二年ほど東京で暮らしていましたから」
「そう考えると十五の景と夫婦になったオレは斎藤が言うように変態なのか?」
「変態さん、ではないと思います」
そう言ってベッドの上に足を伸ばして座っている私の太股に頭を押し付けて悩む左之助さんの頭を優しく撫でていると、しとりが金髪の女の子───ヴィクトリア・パワードと追いかけっこをしているのが窓の外で見えた。
元気なのは良いことですけど。
三歳児にスタミナで負けているヴィクトリア・パワードにそこはかとなくシンパシーを感じながら、左之助さんに「しとりも新しい友達が出来て嬉しそうです」と伝えると「しとりの脚、ドンと親分より速くなってるな」と呟く声が聞こえてきた。
確かに、しとりの身体能力は左之助さん譲りですごいものですけど。四足歩行の動物、ましてや妖怪すら追い抜く程の走力になっているのは不思議ですね。
「景、ヴィクターに聞いたんだけどよ」
「それだけは絶対にしません。パワードさんは不慮の事故が重なって、そうなってしまったけど。望んで人を越えてしまった訳じゃありません。なにより、それだけは望んではいけないことなんです」
哀しみを帯びた強さも生命も要りません。
私は、私として生きたいんです。