「また、動いているわね」
「ん!とんでる!」
カタカタと動く核鉄を手のひらに移して見つめていると、独りでに浮き上がり、赤々と熱を帯びるように赤熱化した核鉄に冷や汗を流す。
「み゛ぃ゛ッ!?」
スコーン!とおでこに突撃してきた核鉄の動きは見えても避けることも防御することも間に合わず、私はおでこに燃えるように熱い核鉄を受け、仰向けに倒れながら額を押さえて情けない悲鳴を上げてしまった。
「どうかしたのかね?!」
「母者、敵襲か!」
「母ちゃん、あたまたたかれた!」
半泣きになりながら熱の冷めた核鉄を拾い上げ、ドクトル・バタフライと個魔の方に先程の出来事を説明すると「何かを伝えようとしているのか?」とドクトル・バタフライは熟考を始め、個魔の方は「影から出ていれば良かった。怪我してない?」と心配してくれた。
左之助さんはお仕事だから気付いていないし、おでこも傷はないから大丈夫だろうけど。左之助さんにバレたら核鉄を交換する事になりそうです。
しとりは飛んだ核鉄を持って、振り回しているけど。お母さん、それが無いと苦しいから早く返してもらえると嬉しいな。
「ん!しとりもとぶ!」
「しとりが飛んだからお母さん置いていかれちゃうから一緒に居て欲しいな」
「…………ん、いっしょいる」
ほんのちょっとだけ葛藤していましたね。でもお空に憧れるのは分かります。あの空を自由に飛び回れて、何のしがらみもなく進んでいきたい。
「フフ、ありがとう」
「しとり君、糸色君にそれを返す前に少しだけ私にも核鉄を見せてもらえるかね?」
「母ちゃん、いい?」
「はい、良いですよ。ドクトルはしっかりと返してくれる良い大人ですから、悪い大人は何も言わずに盗っちゃう人達なんです」
そう言って悪い人と良い人の解説を行いつつ、しとりが悪い人に着いていかないように教える。まあ、ドンや親分、個魔の方も居ますから大丈夫でしょうけど。
不安なものは不安なんです。
「ふむ、見た目や性能に変化は無い。だが、自己修復能力と治癒能力、生命維持装置としての性能は私の核鉄を遥かに上回っている」
「ヤバい進化を遂げるわけか」
「ムッ。勝手に浮かないでくれたまえ」
いえ、それは個魔の方が持っているだけです。
私としとり以外で個魔の方を見えるのは、動物と妖怪であるドンと親分だけです。きっとドクトル・バタフライの肉眼には勝手に浮かび、フラフラと移動する核鉄が映っていることでしょう。
なんともシュールな光景です。