「左之助さん、こちらサンピタラカムイ様です」
「頭のデカいじいさんだな」
「ん!かみさま!」
「景に神酒をくれた神様ってあんたか。助かった、あれで景の命がまだ繋がっている。ありがとう」
「うむ、感謝できるのは善き事だ。人の子らは直ぐに移ろうてしまうからな、こうして近くで見ることが出来るのは実に善き哉」
そう言って笑うサンピタラカムイ様はごく自然な振る舞いで私に神酒の一升瓶を差し出してきたため、そうっと左之助さんを代わりに差し出してみた。
「それもまた湖の守護者に相応しい」
そのまま平然と左之助さんは枡を渡されて神酒を呑まされそうになって「いや、昼間に酒を飲んだら子供の教育に悪いから断らせてくれ」と伝えてくれた。
流石です、左之助さん!
そうやって自分の意見を素直に言えてしまうところは本当に羨ましいです。私もハッキリと意見を言えれば、もっと変われるのでしょうか。
しとりのためにも強い母になりたいです。
でも妖怪もホムンクルスも
「……ふむ、お主らは我欲はあれど子を守ることを優先する善き人の子らだ。それに病を克服しようと支え合うことまた善き姿であった」
穏やかに笑ったサンピタラカムイ様は霧のように消えてしまった。しとりはお髭を触れなくなって残念そうにしているけど。
いつか会えますからね。
「しかし、あの神様は何しに来てたんだ?」
「ん!ん!」
「しとりは知ってるのか。じゃあ、しとりが聞いたことを父ちゃんに教えてくれるよな」
「母ちゃんにおさけあげようとしてた!」
「あの神様の善し悪しが分からねえな」
善良な神様です。
ただ、ちょっとだけ私を心配する度合いが強いようにも感じましたけど。きっと、おそらくですがススハムが掛け合ってくれたのでしょう。
「で、母ちゃんはなんて言ったんだ?」
「んとね、えとね!」
「左之助さん、しとりが困ってますよ」
そう病室の端に作られた三畳間の畳の上でしとりを膝の上に乗せている左之助さんの頭をペチペチと叩きつつ、しとりに「あれは内緒ですよ」と呟く。
「なんだよ、すげえ気になるじゃねえか」
「まだ左之助さんには内緒です、ね?」
「ん!父ちゃんまだおしえちゃめ!」
しとりの言葉に渋々と引き下がってくれた左之助さんに「あとで、こっそりと教えてくれ」と頼まれましたけど。しとりがやりたいことを簡単に教えるわけにはいきませんからね。
それだけは内緒です。