昨日は怒られてしまいました。でも、あれは個魔の方の悪戯なんですけど、影の妖怪である彼女の姿を見ることが出来るのは私としとりだけです。
「やれやれ。随分と怒られたようだね」
「そう思うなら助けてくれても良かったのに」
ドクトル・バタフライは酷いです。裏切りです。あのとき、病室の前を通ったときに冷笑し、そのまま研究所の奥へと消えていったことは忘れていませんよ。
そう心の中で文句を良いながらホットミルクを作ってくれた彼に感謝の言葉を伝えて、しとりと一緒に肌寒い北海道の寒さを防ぐために分厚くて暖かい半纏を着込み、布団の中に湯たんぽを入れて貰っています。
核鉄は対抗するように熱いです。
「しかし、私に見えない転生者か」
「私には見えているけどね。髭親父」
「きっと可憐な少女なのだろう」
「少なくとも八百年は生きているわよ、白髪親父」
「……ふむ、何故だろうか。苛立ちを感じる」
「更年期か?髭を剃れよ、ヘンテコな髭め」
私は何を見せられているのだろうかと思いながらも見えていないことを良いことに、わざとらしく悪口をつらつらと口にする個魔の方の実年齢に驚愕し、陸奥と同世代なんですねと思わず呟きそうになる。
あとしとりにも悪口は聞こえているので、そういうのはやめて下さいね。私は個魔の方が口の悪さで怒られてしまうのは見たくないです。
「糸色君、妖逆門の転生者の事は分かった。だが、左之助君が怒るような事を君がさせるとは思えない。一体、なにがあったのかを教えてほしい」
「……えと、私の影法師を作った個魔の方が左之助さんに悪戯をしに行って、そこから物凄く怒った左之助さんが病室に怒鳴り込んできたんです」
「ふむ、内容次第では怒るべきだな」
「個魔の方もあの時に何を呟いたのか。私とドクトルに教えてもらえると助かるんです」
「何をしたって言われてもね。母体に障るからベタベタするのも口付けも口吸いも接吻も抱き締めるのもやめるようにガツンと言ってやっただけだよ」
私の事を心配してくれたんですね。
嬉しいです、ありがとうございます。
「けど。あとで一緒に謝りましょうね」
「分かった。父者には謝ろう。でも、この髭親父には謝りたくない、なんか負けた気がする」
個魔の方はドクトル・バタフライに対して、何故そんなに対抗心を燃やしているのだろうか?と疑問を抱きつつ、彼女のお願いなので聞き入れる。
「ん!おいしかった!」
「もう飲んじゃったんですね」
「母ちゃんものも!」
「フフ、お母さんは熱いの苦手なのでゆっくりです」
そう言ってマグカップを両手で握り締めて、少しずつホットミルクを飲んでいく。甘さ控え目のクッキーやマカロンがあれば更に良しです。