「お世話になりました。ドクトル」
「何、私も楽しかったよ。このパズルは私が解いてみるつもりだが、あまり期待しないでくれたまえよ」
「はい。それでは失礼します」
「またな、オッサン」
「ん!またね!」
ようやく退院することの出来た私は更に身体の鈍ってしまった身体を左之助さんに支えて貰いながら、しとりと手を繋いで研究所の建つ坂道を降っていると見慣れた毛玉が二匹駆け上がってくるのが見えた。
ドンと親分だ。
その後ろには煙草を咥えて佇む斎藤一と永倉新八も見つけ、まさか土方歳三の事を調べ終えたのかと嫌な予感が脳裏を過りつつ、左之助さんに支えて貰ったまま二人の近くまで歩み寄ってしまう。
「嬢ちゃんは無事に退院できたようで何よりだが、ちょいとオジサン達とお話ししてもらえるか?相楽もお嬢も一緒で良いからよ」
「相楽、脇に手を添えて歩くな。坂道なら転ばないようにもっと腰の辺りを支えてやらないと糸色に余計な負担が掛かるぞ」
「そうだったのか。悪い」
「いえ、私は大丈夫ですから」
二人の圧にビクリと身体を震わせて左之助さんの腰に添えられた腕の中に身体を預け、しとりの手を強く握り締めながら二人の後を着いていく。
二人の反応を見るに土方歳三の居場所を突き止めたのは間違いないのでしょう。不破信二の闘争本能の影響であることは分かっていますけど。
ものすごく怖いです。
「親父、全員にニシン蕎麦をくれ」
「あいよ!」
そうこうしている間に食事処に入り、御座敷に座る斎藤一と永倉新八を追い、左之助さんと私としとりも真向かいの席に座り、私は御座敷から落ちないように奥の席に、しとりは真ん中の席に座って向き合う。
「さてと率直に聞くけどよ。嬢ちゃん、お前さん樺戸集治監に土方さんが居るって知ってたろ?俺ァ……偶然かここ数日前に樺戸集治監の剣術指南役に就いたとき、風貌は少し老いていたがあの人に会ったんだ」
嘘も誤魔化しも聞かないという眼差しだ。
いつものように左之助さんに助けを求めたいけど。斎藤一も永倉新八も大事な人に会うために必死なんだと考えると誤魔化すことが出来なくなってしまった。
「……知っていたのは、ほんの少しだけです」
「阿呆が。何故、俺達に黙っていた」
「教えたら二人は助けるために無茶をするでしょう?」
「ありゃ、気付かれてるみたいだな」
おちゃらけて笑う永倉新八。しかし、その眼光は鋭く射貫くように私を見据えている。左之助さんの手を握りながら、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
「現在、土方歳三は樺戸集治監に居ます。ですが、面会や差し入れ等行うことは不可能かと思います。彼を閉じ込めているのは犬童という方ですから」
「犬童……チッ。アイツか」
「道理で俺達を顎で扱えるわけだ」
私の話せることを少しだけ話して、左之助さんとしとりに寄りかかって二人に叩きつけられていた圧から解放された事を私は静かに喜ぶ。