しとりも井上君達も眠った事を確認し、私は左之助さんの晩酌のお供をしています。
私はお酒は飲めませんけど、身体に良い昆布茶や白湯に解した梅干しを混ぜたものを飲み、ニシンの漬け物や沢庵、胡瓜の浅漬けを楽しみます。
「剣心から電報でまた来るってよ」
「じゃあ、恵さんに会えるんですね」
その言葉と一緒に差し出されたカタカナ文字の手紙を受け取り、恵さんを見つけて私の診察を行うために北海道の函館までやって来てくれることが分かり、お友達に会える嬉しさに自然と頬が緩む。
薫さんも緋村剣心も自分達の父親を探したい筈なのに、私のために東京へ戻って、恵さんを探すために色々と動いてくれている。
申し訳ないのに、とても幸せな気持ちになる。
白湯と梅干しの混ぜ物を飲み、酸味の効いた味にほうっと吐息をこぼす。本当は柑橘系の果物を食べたくなるんですけど、林檎は酸っぱすぎて、蜜柑や檸檬類は北海道だと入手するのは少し難しい。
「景、それ美味いのか?」
「飲んでみますか?どうぞ」
ゆっくりと湯呑みを左之助さんに差し出すと少し口に含み、ゴクリと梅干しの入った白湯を飲んだ左之助さんは「……これは、意外と美味いもんだな」と笑い、沢庵をパリポリと食べ始める。
白湯と梅干しの飲み物は風邪予防にもなりますし、血行促進の効果もあります。実は美肌効果もあるのでは?という話も前世ではよく聞いていました。
「景も沢庵食べるか?」
「いえ、私は梅湯がありますから」
「オレは景と一緒に食べたいんだがな」
「……もう、少しだけですよ?」
左之助さんの摘まんだ沢庵をパクリと口に入れ、ポリポリとした漬け物の程好い味を楽しみつつ、お腹の子に栄養がいっぱい行くことを願うばかりです。
すくすくと育って、健やかに生きて欲しいです。
お母さんの望みはそういうものだけ、早く会えたらしとりとももっと一緒に遊べて、しとりもお姉ちゃんになることわ楽しみにしているわよ。
しとりもお腹の子も大きくなったら、左之助さんと一緒に晩酌に付き合ってくれる子供になってくれたら、きっと左之助さんも嬉しいはずです。
「お月様が綺麗ですね」
「そうだな。良い月見酒だ」
そう言って笑う左之助さんに身体を預けるようにもたれ掛かり、月明かりに照らされた中庭の幻想的な空間に浮かぶ土偶の姿に動きが止まるものの、きっと酔っているのでしょうと一人で納得する。
お酒は飲んでいませんが、酔っているのでしょう。
土偶が空を飛ぶなんてあり得ません。