しとりと左之助さんと一緒に帰っているとき、ススハムと鷲塚慶一郎としとりより少しだけ年上に見える男の子が一緒に歩いているのが見えた。
「鷲塚のオッサン、すげえ笑顔だな」
「フフ、そうですね。にっこりさんです」
「むう、みえない!」
仲良し家族を見ることが出来るのは嬉しいです。子供の笑顔は何も勝ることの出来ない宝物ですから、ああして幸せな人達を見ると幸せな気持ちになります。
しとりは左之助さんの袖を引っ張り、肩車を要求すれば左之助さんは嬉しそうにしとりを抱き上げ、肩車してあげると鷲塚慶一郎達より高く広く見える景色にキラキラとした目を向けている。
すごく綺麗ですよね、北海道。
「母ちゃんちっちゃい!」
「し、しとり?」
「景は小柄だが、可愛いだろ?」
「ん!かぁいい!」
確かに、左之助さんは五年前より背丈も伸びて大きくなった分、私も多少なり大きくなったと思いたいですけど。身長は少しも伸びませんでした。
ずっと栄養を「特典」のエネルギーに使っていたため、そうなってしまうのは仕方ないです。本当に仕方ないですが、私も薫さんや恵さんのように大きく人並みに運動できるお母さんになりたい。
最近は老けているとは言われない代わりに、その身体で人妻の子持ちなのか?という視線を集めることもあり、左之助さに少しだけ負担を掛けている。
「(しかし、平穏が長く続けば続く程に不安は募ってしまう。『エンバーミング』開始は189x年。私は生きているのか分からないけど。おそらく左之助さんかしとり、お腹の子は巻き込まれることになる可能性もある)」
けど、その頃にはもう私は三十歳を越えたおばさんになっていますね。左之助さんは五歳年上ですから三十五歳か三十六歳になっている。
「左之助さん、長生きしましょうね」
「お前は本当に長生きしてくれよ?」
「うっ、はぁい……」
「ん!ながいきしてね!」
肩車をやめて抱っこしてもらっているしとりが、よしよしと私の頭を優しく撫でてくれた。小さな手の温もりを感じながら、左之助さんを見ると「オレも撫でてくれよ、しとり」と拗ねていました。
「フフ、左之助さんも長生きして下さいね」
「ん!父ちゃんも!」
「おう。ありがとうな」
そう言って笑う左之助さんの笑顔にしとりも私も笑い、ふと路地の間に人影を見つけ、誰だろうと覗いて直ぐにまた視線を逸らした。
斎藤一が普通に尋問をしていました。
私は何も見ていません。血まみれの男の人を踏みつけて、煙草を吸う斎藤一なんて見ていないです。