「糸色君、少し樺戸集治監へ行ってくれないかね」
「へ?」
ドクトル・バタフライをモデルに輸入品の顔料を試して描いていたとき、唐突に訳の分からないことを言ってきたドクトル・バタフライの事を見つめる。
なんで、そんなことを?
そう問うことも忘れ、彼の事を困惑気味に見つめていると「Sorry。急すぎたようだな、不破信二が食い逃げ犯として樺戸集治監に投獄されてしまったのだよ」と理由を話してくれた。
「理由は分かりましたけど。何故、私が?」
「君の手術に必要な女傑族の秘宝を、犬童四郎助が清国の業物と気付いたらしくてね。取り返そうにも私は
「……あの、本当に私以外にいないんですか?」
「ススハム君は春に向けて準備中、彼は身体を調整している、信二君は投獄中だ。必然的に余るのは君と私だけになるが私はオペの最終段階を確認しなくてはいけないから除外され、最後は糸色君だ」
そう言って船乗りのポージングを決めるドクトル・バタフライの言葉に絶望し、勢いに任せて「絶望した!」と叫びそうになる気持ちをグッと堪える。
ウィリアム・ヘンリーはアメリカですし。「ゴールデンカムイ」の転生者は今はまだ赤ちゃんですから、本当に私だけ余り物のように残っていますね。
「安心してくれ、護衛は着ける」
「護衛?」
パチン!とドクトル・バタフライが指を鳴らすと見慣れた男の人が部屋の中に入ってきた。永倉新八と斎藤一、鷲塚慶一郎の三人が並んでいる。
「さあ、この三人を選びたまえ!」
いや、ポケットモンスターじゃないんですが?と戸惑いながら三人に視線を向けると「自分を選べ」という強すぎる圧力にビクリと身体が跳ね、腰が竦んでしまい、あまりにも三人が怖すぎて泣きそうになる。
「おじさんを選べば楽だと思うよ?」
「永倉さん、ふざけるのは程々に」
「糸色殿、どうか」
「……さ、左之助さんじゃダメですか?」
「「「ダメに決まっているだろう」」」
「ひぃんっ!」
「糸色君、逆に考えるんだ。三人とも連れていけば問題なく安全に動けるだろう?」
まるで名案を思い付いたように話すドクトル・バタフライですが、この人は「この三人を選びたまえ」と最初から全員連れていかせるつもりだったんですよ。
「分かりました、がんばります」
「あー、悪い。ごめんよ、おじさんが悪かったから無表情にならないでくれ。お嬢ちゃんの顔は笑ってる方がおじさんは好きだぞぉ?」
「能面みたいだな」
「斎藤殿、失礼です」
私は無事に樺戸集治監から出てこれるのかな。