某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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樺戸集治監へ 急

ジロジロと全身に感じる嫌な視線を遮るように牢屋を睨み付ける斎藤一と永倉新八と鷲塚慶一郎の三人に感謝の言葉を送りつつ、帰ったらドクトル・バタフライにも文句を言うと心に決める。

 

ふと鋭い気配を感じた瞬間、私はへたり込むように地面に座り、恐怖に震える身体に何が起こったのかも全く分からず、身を竦ませてしまう。

 

恐る恐る左側の牢屋を見上げる。

 

そこには、ハンペンがあった。

 

いえ、あれは瘤?と考える間もなく頭に負荷を掛けてしまい、鼻血を滴しながら斎藤一の腕を掴みながら「背負って逃げて下さい!」と私は叫んだ。

 

「女ァ~~~ッッッ!!!!」

 

「ひぃっ!?」

 

「こりゃあ大変なヤツだな!」

 

牢屋の鉄扉と格子を突き破って現れた巨体に思わず、私は悲鳴を上げてしまう。まだお髭は生えていないものの、おでこのハンペンにも見える瘤と潰れて膨らんだ柔道耳のある青年───牛山辰馬が其処にいた。

 

二十代前半、原作まで二十年近くあるけど。

 

まさか四十代であの強さを?

 

「さ、斎藤さん、絶対に止まらないで下さいね?!」

 

「阿呆が。あんな変態を収監するな」

 

「変態だから収監してるんだろ?」

 

「お二方、軽口を言っている場合ではない」

 

ドシンと地響きを起こして進んでくる牛山辰馬に警棒を持った看守が立ち向かうも片手間に薙ぎ倒され、洗練された柔道の手技が武器を制していく。

 

「どうする。下手に殺せんぞ」

 

「相楽の旦那が居りゃあ殴り勝てると思うが、今すぐ呼んでも間に合わないだろうね」

 

「抱かせろ!今すぐ!俺にッッ!!!」

 

「止まれ、牛山ァ!」

 

「糸色先生は我が国の宝だぞ!」

 

私の事を守るために看守の人達が集まり、なんとか食い止めてくれている間に来た道を避けるように戻り、私達は不破信二の牢屋の鍵を開ける。

 

「不破さん、強い相手です!」

 

「へぇ、強いヤツか」

 

私の言葉にニヤリと笑った不破信二は斎藤一達の間を掻き分け、ズンズンと発する汗が煙に変わるほど興奮した牛山辰馬の眼前に立ち、お互いに組み合った。

 

プロレスで言えばロックアップの格好で向かい合い、ギリギリと囚人服の繊維が千切れる音と共に不破信二の身体が跳ね上がり、彼は宙を舞う刹那に身体を翻して、逆さまになった身体のまま牛山辰馬の顔に横蹴りを打ち込み。

 

両手を地面につき、腕力のみで宙に跳び上がりながら牛山辰馬の腕に絡み付き、顎に足を引っ掛け、後頭部を膝で蹴り潰した。

 

少し変則的に見えるものの圓明流の「飛燕十字蔓」だ。

 

「コイツで倒れねえかよ!」

 

「フンッ!!」

 

───けれど。牛山辰馬は自分の右腕に絡み付いた不破信二の肩を掴んだ次の瞬間、力任せに彼の事を地面に向かって叩きつけるように投げ落とした。

 

「不破の秘技、脱皮……なんてな」

 

不破信二も囚人服の帯を緩めて脱出した。

 

 

 

 

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