某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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不敗の四百年 序

不破信二の打つ左右の拳と蹴りを的確に捌き、囚人服のズボンを狙って掴みを繰り出す牛山辰馬の攻防を隠れて見守る最中、肩と腕を掴まれ、二人はまた組み合う。

 

しかし、上着を着ていない不破信二のほうが圧倒的に不利に思えるけれど。四百年間、不敗を貫く不破の一族が死を感じる刹那に飛び込まないわけがない。

 

「セイッ!!」

 

「良いね、蹴り合いだ!」

 

投げと同時に放たれた足払いに下段蹴りを合わせる度、ゴッ、ゴッ、と鈍い音が響き渡る。それでも二人は蹴り合いを止めず、ズボンが破れて血が滲んだ刹那、ズルリと血脂で不破信二の身体がぐらつく。

 

その隙を見逃す程牛山辰馬は甘くなく、不破信二の右脇の下に左腕を通し、そのまま左手でうなじを掴み、腰を切るように捻り、後ろ腰に滑らせるようにしながら彼の身体を地面に叩き付ける。

 

「腰車…!」

 

「お嬢ちゃん、(やわら)が分かるのか?」

 

「い、いえ、技の名前を知っているだけです…」

 

永倉新八に驚きたい様な表情で聴かれ、慌てて否定するも「緋村が言ってたみたいに、やっぱりお前さんは何か変なものを抱え込んでやがるな」と呟かれる。

 

緋村剣心、また「やっぱり」って言ったんですか?

 

いえ、それよりも木製の床とはいえ頭から落とされたら不破信二でも危ない可能性があります。そう不安に思いながら牛山辰馬の後ろ姿を見つめていたとき、中々立ち上がらない彼に違和感を感じ始める。

 

タンと不破信二が牛山辰馬の下から転がり出てきた。

 

ポタリ、と親指に鮮血を纏っている。

 

「あれは、暗器か?」

 

「圓明流は無手の流派ですし、いえ」

 

まあ、当然不破圓明流にもありますよね。

 

「野郎、俺の腹に風穴開けやがったな?」

 

「肋は折ってないぜ、牛坊主」

 

……あれ?牛山辰馬、普通に話せているということは正気を取り戻したということで良いのでしょうか?と看守の方に聞けば「わ、我々では太刀打ち出来ません!」と頭を必死に振って拒絶する。

 

「投げ殺してやる」

 

「殺せるもんならな。不破は四百年不敗だ」

 

そう言って構える不破信二の姿が一瞬だけ陸奥九十九と重なるように見えた。まあ、当然ですよね。不破も陸奥から分かれて生まれた一族ですから。

 

「抜かせ。不敗はこの牛山辰馬だけだ」

 

不破信二はゆらりと左構えで組みを仕掛ける牛山辰馬の素早い手を紙一重の間合いで避け、軽やかに舞うように彼の周囲を駆け回り、閃光めいた速さで繰り出された正拳の一撃が牛山辰馬の胸を打った瞬間、ビリビリと地面や牢屋の格子が数秒ほど震えた。

 

「……ゴゥッ!?…」

 

「マジかよ。俺の無空波を受けて気絶しないのか」

 

無空波。

 

圓明流奥義の一つですが、現実で見ると何を行っているのか全く分からないながらも、あの牛山辰馬に両膝をつかせ、動きを止めることが出来てしまう技なのですね。

 

 

 

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