名残惜しそうに土方歳三と別れることになった永倉新八と斎藤一の二人に連れられ、私は犬童四郎助の執務室の扉を開けた瞬間、異様なモノを見つけた。
煌びやかに装飾の施された刀。
柳葉刀と呼ばれる種類の清国の刀剣、その刀身には花の彫りがあり、少し形は違うけれど。不破信二の持ち帰ってくれた、この刀が斬毒刃なのでしょう。
「糸色、刀袋に仕舞っておけ」
「はい。あの、窃盗になったりするんじゃ」
「元々の持ち主はお前だ」
「そうそう。お嬢ちゃんが余計な事で困ったら藤田警部補がなんとかしてくれるって」
私の不安を何でもないように笑って斎藤一に押しつける永倉新八の言葉に苦笑しつつ、囚人を収監する独房棟の壁を破壊し、不破信二と牛山辰馬が広場に飛び出る。
まだ戦っているのかと驚く私の身体を抱き上げ、駆け足で執務室の窓へと飛び出し、野次馬の中に紛れ込みながら鷲塚慶一郎も無事に合流してくれました。
しかし、二人の攻防は苛烈だ。
どちらも不敗の称号を持つ人であり、その実力に見合う鍛練を積んでいる。だからこそお互いに相手を倒したいという欲求が先走ってしまっている。
「不破さん、無空波をもう一度!」
「むくうは?」
「無茶言うぜ。全く、乗ってやるよ!」
私の指示とも言える声援に応えてくれた不破信二は凄まじい速さで左拳を牛山辰馬の脇に叩き込み、二度目の無空波を放って今度こそ牛山辰馬の意識を刈り取った。
「以蔵と戦ったとき以来の満足感だぜ」
コキリと首の骨を鳴らして満足げに笑った不破信二に向かって大歓声の雄叫びが鳴り響く。新撰組の三人も小さくガッツポーズを取っている。
やはり男の人は幾つになっても意地と意地をぶつけ合える喧嘩が大好きなのだろうか?と思いながらも身元引受人の書類に署名し、鷲塚慶一郎の集めてくれた不破信二の荷物と胴着を彼に返す。
「犬童さん、ありがとうございました」
「いや、こちらも良いものを見れた。不破、もう此処には来るなよ、来たところで芋粥も麦飯も大飯ぐらいのお前には出さんからな!」
そう言うと犬童四郎助は私にお辞儀して、ズンズンと執務室へと戻っていく。私達、ほとんど私の病気を治すために行われた樺戸集治監の面会と身元引受人の無事に終わりましたね。
「……阿呆な犬で助かったな」
「二十年後、そんときにはまた会いに来るよ」
「私だけ会えていないのだが、また侵入する機会があるのなら今度は私も糸色殿の護衛役にしてほしい」
その言葉にその時は私は安全な場所にいたいです。そう静かに思うばかりでした。