斬毒刃の加工を行うためにドクトル・バタフライは暴れる斬毒刃を押さえつけ、私は私が言ったといえ両腕を酷使して無空波を使った不破信二の左右の腕に添え木と包帯を巻き、しっかりと固定してあげる。
さっきの「俺と殺し合うか?」という意味合いの言葉を聞いているせいで、まだちょっとだけ彼の事は怖いけれど。しとりと個魔の方もいるので、いきなり襲ってくることは無い筈です。
私は、そう思いたいです。
「糸色の知識って何処まで見えるんだ?」
「言葉の意味にも依りますけど。大体の物事や『物語』の事は把握していますよ。あと誰かの人生の全て覗くように見ることは不可能です」
「なら『サムライスピリッツ』とか」
「あれは江戸時代です。天明辺りの出来事なので『物語』が繋がったとしても過去の事象となりますし、貴方の場合は兵と戦える日々を欲しているだけですよね」
「そりゃあな。俺は不破だぜ?」
自信満々に胸を張る不破信二の包帯の真ん中を切り、交差するように片方を戻して縛る。ガーゼや金具で留める手法もあるけど。
動き回るなら此方の方が良い。
「ありがとよ。無空波は暫く使えないが、まあ無理すれば虎砲は使えるな」
「むりはだめだよ?」
「嬢ちゃんの言う通りだぞ?聴こえないだろうけど」
個魔の方の言葉は私が聴こえているので大丈夫ではあるものの。やはり筆談を視野に入れるべきですね、彼女は文字を書くのは面倒臭いと言っていたけれど。
寂しがり屋さんなので。
まあ、私としとりが生きている間は傍にいてあげたい。左之助さんも見えたら良いんですけど。やはり、妖怪は見えても霊的な要因の強い彼女を見るには、糸色の霊媒の血筋も関連しているのでしょう。
「ん!しとりもやる!」
「いや、終わってるんだが……頭に巻いてくれ」
「ん!」
包帯や消毒液を片付けているとしとりにせがまれて戸惑う不破信二が渋々と頭を下げ、私の真似をして包帯を巻いていくしとりが視界の端に見える。
ぐるぐると顔を疎らに覆われていく不破信二の困惑の視線を先程の怖いことを言われた仕返しではないけれど。しとりが楽しそうなので敢えて無視をする。
「嬢ちゃん、巻きすぎだよ?嬢ちゃん?」
「ん!ん!こまちゃんもやる!」
「えぇ?私も巻かれるの?」
個魔の方はしとりの笑顔には勝てず、そのまま個魔の方も包帯を巻かれた瞬間、不破信二はいきなり虚空に人の輪郭が見えたことに驚き、思いっきり飛び退いた。
分かります、ドクトル・バタフライも最初に見えない転生者がいることに驚いていましたし。彼女のアドバンテージの凄さに苦笑いを浮かべていました。