左之助さんは
明治時代に生きている最強の称号を持つ比古清十郎、伝説の人斬り抜刀斎の緋村剣心、御庭番衆の頭領の四乃森蒼紫、天賦の剣才を持つ瀬田宗次郎、元新撰組三番隊隊長の斎藤一、他にも沢山の人の誰よりも左之助さんは強いと私はそう信じている。
───けれど。不破は人間の外側に居る存在です。
「うおらあっ!!」
「じぃいやっ!!」
ゴッ、ミシリ…!と鈍い音と肉の潰れる音が聴こえる最中、左之助さんと不破信二の中段蹴り、側蹴りや横蹴りとも呼ばれる蹴りを叩き合わせる。
一合、二合、三合、お互いの脚をへし折るつもりで繰り出される蹴り合いに、しとりは怯えていないかと隣を見れば「おー!おー!」とはしゃいでいた。
うぅ、お母さんは不安なのにしとりはすごいです。
「ラッ!」
不破信二の右上段回し蹴りに対し、左之助さんが左片手を上げて防御の構えを取った瞬間、蹴りの軌道は不規則に標的を変えた。
一撃目は空振ったその時、地面を跳ねるように右足が左之助さんの股間部位を狙う。────が、左之助さんは蹴り足に二重の極みを撃ち込み、無理やり不破信二の蹴りを防ぐ。
そして、今のは圓明流の蹴り技の「紫電」だ。
「あっぶねえ…!」
「コイツも防ぐのかッ、良いねえ!」
「ブッ殺す!」
しとりが見ているのに悪い言葉を言っていると不安に思いながらも彼女を見ればキラキラとした眼差しを二人に向けている。しとり、貴女も左之助さんと同じように喧嘩をするのが大好きになってしまったの?
「あ゛ァ゛~ッ、糸色と嬢ちゃんに悪いのは分かってるけど。もう我慢できそうにねえな。相楽、今からお前を殺すために攻撃する」
「誰が死ぬか。こちとら女房と爺婆になるまで、ずっと生きる約束してるんだよ!四百年間不敗だか知らねえが、オレと景の邪魔はさせねえからな!」
そう言うと二人は同時に駆け出し、左之助さんが真っ直ぐに右拳を振り抜くと不破信二も瞬時に十字を描くように左拳を鉤突きで繰り出し、肩と頭で左之助さんの拳を押さえつけ、バキッ…!と鈍い音が響いた。
折れた。
「ぶあ゛ッ?!」
「此方は陸奥とも戦り合ってんだよッ!」
本来はあのままクロスカウンターのように相手の腕を固定し、肘関節をへし折る圓明流の「獅子吼」という打撃と関節の複合技なんですけど。
三年前、ちょうどインディアンと騎兵隊の抗争に巻き込まれたGBW参加者達と共に戦い、無事に騎兵隊を追い返した後。左之助さんはお礼代わりに喧嘩した陸奥雷に危うく右腕をあの技で壊され掛けていました。
あの時は凄く焦ったものです。
ドクトル・バタフライが居てくれて助かりました。