身体の不調は無くなったように感じる。
いえ、実際に無くなったのでしょうが、物は試しと言いますから左之助さんやドクトル・バタフライの見守って貰いつつ、少しだけ走ってみることになりました。
「ん!かけっこ!」
「母者、無理するなよ?」
「分かっています!」
フンスと胸を張って走る準備をする。
ドクトル・バタフライのお友達の手掛けたジャージを身に付け、しとりと一緒に駆け出した瞬間、なんと3メートルも長く走れました!
「ひぃっ、へうっ、ひいっ!」
「お、おい、あんまり無茶するなよ?」
「は、走れましたよ、左之助さん、ひいっ」
「ん!母ちゃんおそい!」
トタトタと運動用の短パンを履いているしとりに言われ、悲しい気持ちになるけれど。進歩しています、病気も完治していることが分かりましたし。
これは僥倖です。
「10メートルは走れると思ったのだが」
「そ、そんな長距離を走れと!?」
「長距離って、君ねえ?五歩ほど走っただけでバテる方が驚きと言うべきか、やはり病気以外の要因も重なりすぎていると考えた方が良さそうだ」
「オッサン、どういうことだよ」
「糸色君自身は無自覚かも知らないが『人を惹き付ける才覚』を持っている。友情、愛情、色情、悪意、殺意、執着心、独占欲、他にも沢山の感情が君を取り巻き、縛り付けているのだろう」
……私って問題解決後に新しい問題を引き起こすタイプの迷惑系ヒロインとかそういう立場を神様に押し付けられているのでしょうか?
薫さんが鵜堂刃衛や雪代縁に捕まったとき、私も武田観柳や雪代縁、外印に捕まっていましたし。そう考えるとドクトル・バタフライの言葉は真実味もあります。
「ちなみに大部分は左之助君だね」
「「えっ、なんで」」
思わず、私と左之助さんは顔を見合わせてしまう。
「愛とは裏返せば独占欲だ。そもそも左之助君は嫉妬深く糸色君の交流関係を把握し、たまに『誰にも会わせないように首輪を着けて閉じ込めるか?』とか『いっそのこと手足を切り落として…いや、鎖で繋げば』とか『外来品に薬があったな』とか毎日のようにブツブツと言っているじゃないか」
「何でオッサンが知ってるんだよ!?……あ゛っ」
「さ、左之助さん?」
ドクトル・バタフライの言葉に驚きと怒りを向ける左之助さんを不安げに見上げる。そ、そんなことを毎日のように思っていたんですか?
「ち、違うぞ!?お、オレはお前を傷付けるつもりはないんだ。いや、確かにお前に近付く男は殴り飛ばしたくなっているが我慢している!」
「で、でも……」
ど、どうしましょう、凄くドキドキする…!
「ふむ、ゲイン・ロス効果かな?」