薫さんのお父様の捜索を再開し、その情報を共有する場所は何故か私の過ごす病室になりました。しとりは剣路君と仲良く遊んでいますが、二人だけの駆けっこは楽しいのでしょうか?
左之助さんは剣路君がしとりに急接近しないかと見つめていますけど。まだ二人とも三歳児なんですから、初恋だとしても生暖かく見守りましょう。
「お父さん、何処にいるのかな」
「人手を増やすために阿部さんを頼みますか?」
「あべ?まさかあの阿部殿でござるか?」
「嗚呼、その元御陵衛士の阿部十郎だ。今は農商務省に勤務する傍ら、林檎農家を営む変人。一刀一丁という独自流派を使う以外は抜刀斎の知っている阿部十郎だ」
そこも面識があるんですね。
阿部十郎は新撰組の銃火器を取り扱う部隊。緋村剣心と直接戦ったことは無いにしても、あの拳銃の腕前と剣術の融和は正しく達人の領域ですし、当時もかなり注目を集めていた可能性もありますね。
「赤報隊にも居たぜ。ま、アッチはオレの事は忘れて御陵衛士なんていう居場所での思い出と復讐に燃えてるみたいだったけどよ」
「…左之助さん、大丈夫ですよ」
そっとベッドの縁に腰掛ける左之助さんの背中を優しく擦り、此方に凭れるように倒れてきたので、ポンポンと頭を優しく押すように撫でていると私は頭を軽く平手で叩かれ、痛みも衝撃もなかったものの「ひぃんっ!?」と驚きながら頭を押さえるように蹲る。
「甘やかすな。阿呆が」
「てめえ、なにしやがる!」
「さ、斎藤、女子に手を上げるのは駄目でござるよ」
「黙れ、阿呆と抜刀斎。糸色も執着心を増大させる事は控えるように注意を受けて尚、そうやって甘やかすから相楽の箍が外れるんだ」
その言葉にハッとしてドクトル・バタフライと恵さんの言いつけを思い出したものの。やはり自分の大好きな人を甘やかしていたいという欲求があります。
「左之助、ちょっと其処代わって」
「え?は、おい?」
私と左之助さんの間に割り込むように入ってきた薫さんに驚きつつ、どうしたのかな?と首を傾げると、綺麗な顔を私の耳元に寄せて、こっそりと「左之助って何かヤバいことしちゃったの?」と問いかけてきた。
やばいこと。
最近は特に色々とありますね。
「(あんなこと親友の薫さんでも言えません。ま、まあ、二人きりなら相談することは出来ますけど、警官の斎藤さんが居る時点で言ったら即逮捕に……)」
「か、顔が青いわよ!?大丈夫なのよ!?左之助、あんた景さんになにをしようと」
「まだ何もしてねえよ。いや、したいことはあるにはあるんだがオッサンや恵に止められてな」
「ちょっと恵さんに聞いてくるわ」
「では、拙者も」
ああ、行ってしまいました。