某剣客浪漫世界で私は物書きをする。   作:SUN'S

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流浪人へ戻るとき 序

大久保利通によって私の名前を知った左之助さんは事ある事に私の名前を呼ぶことが増えたものの。志々雄真実に関連する事は起きず、私と左之助さんの生活に変わったことはない。

 

強いて話題を挙げるとごろつき長屋を退去し、偽物の人斬り抜刀斎事件の時に出来た神谷道場付近の空き家に引っ越した事だけだろうか。

 

元々は武田観柳の裏商売に加担していた商家だった事もあり、二階建ての蔵付きという贅沢な造りになっている。左之助さんの斬馬刀を置ける部屋もあるため、寝ているときに真横に落ちてくるという危機も無くなる。

 

あの時は本当に死ぬかと思ったわ……。

 

「景、この火鉢は何処に置くんだ?」

 

今も「糸色」と呼ばれることは減り、変わりに「景」と呼ばれることが増えている。私の名字と名前は奇しくも『さよなら絶望先生』に登場する天才画家「糸色景」と同じである。

 

まあ、糸色家とは多少なり縁もあったりする。

 

「リビング……コホン、火鉢は居間に置いて下さい」

 

「おう。それとコソコソとお前が溜め込んでたオレの春画の束は捨てといたぞ」

 

「な、なんでですか!?」

 

突然の酷い言葉に思わず大きな声が出てしまい、お手伝いに来てくれていた神谷さんや妙さんは口許に拝むように重ねた手を当てて、何処か興味津々の眼差しを折り畳まれた紙束に向けている。

 

三条さんは春画の単語に顔を赤くして、そそくさと室内の掃き掃除に行ってしまった。まあ、確かにお年頃なら恥ずかしいわね。

 

「いや、旦那の春画は売るなよ」

 

くっ、それは反論できない正論ですね…!

 

「……まあ、良いでしょう」

 

「わ、わっ、剣心のもある!?」

 

「糸色、見境ねえな」

 

「明神君、デッサンは物書きの嗜みです」

 

「で、でっさん?」

 

「……コホン、下絵、練習です」

 

前世の記憶を頼りに描いていた緋村剣心の錦絵を見つめて興奮する神谷さん、そんな物を描いていた私に呆れた眼差しを向けてくる明神君に反論するも言葉が伝わらず、日本語で言い直す。

 

緋村剣心の春画は描いていないけど、かなりカッコいい出来映えだと自負している。それにしても最近気を抜くと言葉使いが昔に戻ってしまうわね。

 

「ね、ねえ、糸色さん、お願いがあるんだけど」

 

「緋村さんの絵なら好きなだけ持っていって良いですよ。そっちは趣味で描いていたものですから」

 

「本当!ありがとう!!」

 

「私もええですか?」

 

「はい。片付けも捗りますから良いですよ」

 

神谷さんに続いて妙さんもお願いしてきたので普通に承諾するとふたりは真剣に吟味を始めしまった。まだ引っ越しのお片付けが終わってないんですけど。

 

「三条さんも欲しかったら取って下さいね」

 

「は、はいっ」

 

私の言葉に畳の埃を掃いていた三条さんも頷き、明神君の変なものを見せたら怒るぞという視線に神谷さんと妙さんを指差して安全性を保証してみる。

 

 

 

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