今日も夕刻間際までお父様の捜索を続けていた薫さん達を労い、私もドクトル・バタフライの研究所の台所を借り、全員分の料理を用意し、大広間の方で食事を取ることになりました。
私は厚手の半纏を纏い、左之助さんとしとりの近くに座ってゴポゴポと煮え立つお鍋の食材をしとりのお椀に移してあげる。
ドンと親分もドクトル・バタフライ試作のドッグフードや蒸して解していた鹿肉と山菜をしっかりと食べています。クズリとすねこすりですけど。
そういうものを食べても問題ないのです。
「そういえば手懸かりは見つかったんですか?」
私の質問に誰も彼もが首を傾け、悩む。
「あの?」
「景さん、聞きたいことがあるんだけど」
「はい。なんですか、薫さん」
「貴女の知り合いに刀鍛冶っている?」
「新井殿ではござらぬよ」
薫さんと緋村剣心の眼差しは真剣だ。
しかし、私に刀鍛冶の知り合いはいない。戦国時代に飛ばされたときは二人ほど妖怪の刀鍛冶と知り合いましたが、この時代に生きているのかは謎です。
「刀鍛冶……いないですね」
「では、斎藤の刀は誰が?」
「あれは姿お兄様の私物を譲って下さったんです。私は武道や武術は使えませんし、家督を継ぐのも姿お兄様で……(あれ?姿お兄様って夫婦になったとき、どちらで結婚したんでしたっけ?)」
女の子として夫婦になった。
いえ、それは鎌足お義姉様です。
「やはり姿殿に行き着くでござるか」
「でも女の刀鍛冶なんて今のご時世にいるの?」
どうやら私の知らないところで、またしても大変な事になっているようですが、もう危ないことはないと信じましょう。私は出産して、この子と一緒に東京の我が家に家族みんなで帰るのが目標です。
「女の刀鍛冶……ねえ?」
ジッと私を見下ろす左之助さんに首を傾げながらお肉を差し出すと私のお箸を齧る勢いで頬張り、モグモグと食べてしまった。しとりは良いですけど、お父さんの左之助さんがしちゃダメな事ですよ、全く。
「糸色姉ちゃん、本当に知らねえのか?」
「明神君、その『本当は知っているんだろ?』という眼差しはなんですか。まるで私が物事の全てを操っている黒幕かのように」
「「「「………………」」」」
「えっ。う、うそですよね?左之助さんまで!?」
ふいっと一斉に顔を逸らす皆に戸惑い、焦りながら左之助さんの肩を揺さぶるも「お、オレは知らねえな」と呟き、斎藤一に視線を移せば「お前の秘密は公然みたいなものだ」と言われてしまう。
「糸色殿、お主はやはり…」
「その『やはり』って何なんですか。私は物知りではありますけど、何でも知っているわけではありませんよ!左之助さんも酷いですっ」
こんな押せば三歳児のしとりでも簡単に勝てる程にか弱い私が世界の全てを支配して、物事の全てを操っている黒幕になるなんて無理です。