「けんちゃん、はやく!」
「しとりちゃん、まって!」
トタトタと軽やかに研究所の敷地内に新しく出来たブランコや滑り台で楽しく遊ぶしとりと剣路君の事を薫さんと一緒に眺める。
二人とも元気に駆け回るためにドクトル・バタフライの用意してくれた運動用の服に着替えています。着物だと走りにくいですから、これで転ぶ心配も軽減され、私は安心して見守ることが出来ます。
左之助さんは父親探しのため緋村剣心と明神君に引きずられ、女の刀鍛冶という新しい手懸かりを頼りに探し回っている様ですが、北海道は広大な土地面積を有していますし。そう簡単に見つけることは出来ず、神谷越路郎の捜索は難航してしまっているそうです。
「木刀と日本刀を携えた剣客。写真を焼き増しして配って捜索するという手もありますが、薫さんは自分で見つけて上げたいんですよね?」
「うん。剣心も景さんのおかげで健康だけど、やっぱり会えるときに会わせてあげたいから」
「フフ、分かりますよ。まあ、どちらが先に『お爺ちゃん』と呼んで貰えるかで私の身体の事も考えずに喧嘩する事は無いでしょうが、この場合は比古さんが剣路君のお爺様になるのでしょうか?」
「そっか!比古清十郎は剣心の育ての親になるし、やっぱり剣心の養父として、あの人は剣路のお爺ちゃんということになるのかも」
比古清十郎をお爺ちゃんと呼ぶ。
肉体の衰えも剣気の弱りも感じさせない彼がお爺ちゃんと呼ばれて、ウチの両親のように孫フィーバーするとは思えませんけど。
やはり気になりますね。
「景さん、ところで首のそれって」
「チョーカーです」
「ちょうか?」
「はい。外来の装飾品です、贈り物として贈る場合は『あなたを独り占めしたい』や『絶対に離さない』なんていう意味もありますが、私の身に付けているチョーカー、何色に見えますか?」
「何色って、黒いけど」
そう、私の身に付けているチョーカーは黒色です。
十八世紀の現在、海外だと黒色のチョーカーは首枷や罪人と示していたという話もあり、分かりやすく言えば「お前の自由を奪う」ということになりますね。
左之助さんの独占欲の深さにドキドキします。
「……左之助って、そういうことするんだ」
「緋村さんも意外とそうかもしれませんよ?ほら、ニコニコと笑っているのに時折目付きが澱んでいるときがありますから親友同士ですし」
「け、剣心が私に首輪を?」
「拙者は妻に首輪を付ける趣味はござらんが?」
「へえ、チョーカーにはそんな意味もあるのか」
ビクリと身体を震わせながら薫さんと一緒に恐る恐る後ろに振り返ると左之助さんと緋村剣心が佇んでいた。悪口も陰口も言っていないのに、なんだか怖いです。