嬢ちゃんの父親で剣心の義父に当たる神谷越路郎の手懸かりを持つ刀鍛冶の女───戦国時代にオレの砕けたの蛮竜を鍛え直してくれた刀々斎の名を継ぐ女の指し示す場所をオレ達は探し歩いている。
「悪いな、斎藤。非番だってのによぉ」
「お前のためでも緋村のためでもない。個人的に気になる事が多いというだけだ。それに俺の刀を鍛えた刀鍛冶の血筋だ、興味もある」
「ああ、姿のくれた刀か」
その言葉にカタカタと震える長刀の刀身が僅かに見えた瞬間、直ぐにまた鞘の中に押し込まれる。どうにも人を斬る欲求と斎藤に使われる不満で何度も脱走を試みている様だが、ありゃあ斎藤が死ぬまで無理だろうな。
オレと斎藤の会話に興味を示した弥彦が「それも妖刀だったりするのか?」と興味津々といった風に斎藤に聞き、森の中だっていうのに煙草を吸う斎藤は「銘は竜王。刃渡りは太刀と打刀の中間、使い手を選ぶが折れない良い刀だ」と刀を抜いて、弥彦に見せている。
アイツ、何気に子供に優しいよな。
まあ、斎藤も三尺九寸程度の景を相手していると子供の相手も上手くなるか。しとりも永倉のオッサンの髭を気に入っている。
…オレも髭を生やすか?
いや、景は髭面のオレなんて見たくねえか。
「しかし、写真一枚で見つかるのかよ」
「目撃情報はある。夜な夜な木刀と刀を振るっている笠を被った侍の話だ。だが、この噂が神谷越路郎という確証は見つけるまで分からないぞ」
「まあ、それは分かってるけどよ。弥彦、もう一度写真見せてくれねえか?」
「おう。ほらよ」
「本当に山道に居るのか?」
そう言って行き交う人々の顔と写真を交互に見ているとき、団子屋で串団子を食っている笠を被った男が見えた。写真と団子屋のオッサンを見比べる。
「アイツじゃねえか、これ?」
「よし、斎藤。職務質問してこい」
「阿呆が。笠を取って本人なら捕まえるだけだ」
斎藤は携帯用灰皿に煙草を入れ、火を揉み消すと団子屋に近付き、男に話しかけると何銭か長椅子に置くなり、何事もなかったかのように走り出しやがった。
「貴様、警官から逃げるとは何事だ!」
「顔が怖いお巡りさんなんていねえよ!」
……まあ、それはそうだな。
オッサンの言いたいことは分かると弥彦と一緒に頷きつつ、斎藤よりも素早く駆ける男の走りに違和感を覚える。普通の走りにしては地面に残る足跡が異様すぎる。
地面を深く踏みつけ、地面が窪んでいるのだ。
「嬢ちゃんの父親、ちぃっとばかしヤバいか?」
「なにか分かったのか!」
確証は無いが妖怪絡みなのは間違いねえな。