五年前、明神君や薫さんの戦うところを何度も見て記憶に残り続けている神谷活心流の太刀筋を更に剪定し、より実用化を突き詰めた撃剣の動き───。
「妖怪と戦り合うのには慣れてるが、お前さんは随分と珍妙なヤツに気に入られたんだな。コイツは腹ん中に俺と似たように別のヤツを飼ってやがる」
「そ、そのお腹の中の人はお友達の友達です!」
「そりゃまた難儀なお友達だっ!!」
そう言って神谷越路郎は笑いながら木刀で奈落の触手を破壊し、妖しげな気配を発する刀を振るって切り落とした奈落の触手を突き刺す。───刹那、奈落の触手は悶え苦しみ、刀に妖気を奪われる。
あの異様な吸収力、あれは奪鬼だ。
鉄砕牙を本当の意味で追い詰めた妖刀……いえ、魔刀とも言える
苦し紛れに妖怪の身体の一部を放出した奈落は「彼」の身体を使って逃走した。四魂の玉の存在しない……この明治時代に復活したとは俄には信じ難い。
「お嬢ちゃん、怪我はなかったか?いやー、妹を守るなんて出来た姉ちゃんだ」
「……あの、この子の母は私です」
「お、おお、すまないな」
完全体には程遠いものの、あの奈落と互角以上に渡り合っていたとは思えない程に愉快なおじさんだと思い、笠の取れた彼の顔を見た瞬間、私の頬はあり得ないものを見てしまい、引き釣ってしまった。
「(せつ、な……?)」
神谷越路郎の顔の半分に半透明の顔が見える。人面疽。そう呼ばれる事もあるけど、今回は取り憑くことに失敗して霊体の一部をはみ出し、その状態で不完全に定着している状態になっているようです。
「ん!おかおふたつ!」
「し、しとり、ダメですよ?」
「いや、構わないさ。すげえだろ?おっちゃんの顔に知らねえヤツがくっついちまってな。コイツを取るために色々と日本各地を渡り歩いているんだ」
成る程、そういう理由だったんですね。
てっきり薫さんのところに帰らないのは人を斬るために魔道へと歩んでいるのかと思っていましたけど。どうやら違うようで安心しました。
しかし、どう見ても「月華の剣士」に登場する殺戮剣と呼ばれた刹那にそっくりですね。刹那自身も孤児の身体を乗っ取り、殺戮を繰り返していましたが、神谷越路郎の精神力で抑え込んでいるみたいですね。
「薫に合わせる顔がねえんだ。それに人でダメなら妖怪に聞けばいいと回ってたとき、アンタの人を癒やす力の事を聞いたんだ。頼む、助けてくれねえか?」
そ、そう言われても助ける力なんてないです。