ドクトル・バタフライの研究所の壁を破壊し、敷地内の広場に飛び出した二人を安全圏に身を置き、私達は遠巻きに眺めているけれど。
緋村剣心は素手で神谷越路郎の木刀をギリギリの間合いで受け流し、袖や腕を弾くことで太刀筋を狂わせ、致命傷を避けながらチラリと彼は明神君を見た。
「弥彦、木刀を拙者に!」
「そらよ!」
明神君の投げ渡した木刀は携帯用の物「倭杖」と呼ばれる木製の簡易的な鍔を嵌めた廃刀令の明治時代でも出歩く時に帯刀できる物です。
五年前は普通の竹刀でしたが五年も経てば軽やかに振るえる竹刀より重く、より日本刀に近い形状の木刀を持つのは剣術道場の師範代として当然の事だと思いますけど。
あの二人は真剣のように木刀を振るっている。
「覚えとけよ、剣路。アレが幕末最強と謳われたお前の父ちゃんの使っていた流儀───飛天御剣流だ」
左之助さんの言葉にキラキラとした眼差しを緋村剣心に向ける剣路君に「剣路は神谷活心流を継ぐもんね!継いでくれるわよね?!」と焦る薫さんのやり取りを横目に、私は神谷越路郎の動きを見つめる。
しなやかな足捌きは道場剣術というより実践を想定して鍛え直したものであり、防御に重きを置いた神谷活心流に緋村剣心は攻めあぐねている。
「左之助さん、止めなくて良いんですか?」
「何で止めるんだよ。折角、剣心が嬢ちゃんを娶るときに出来なかった『娘さんをください!』が出来てるんだぞ。もうちょっと見守ってやろうぜ」
「……成る程、これはご挨拶なんですね」
五年越しに行われる親へのご挨拶ということなら私達は静かに見守るべきですね。しかし、緋村剣心の事を本気で攻撃しているようにも見えるけど。
おそらく、私の勘違いですね!
私の両親は左之助さんが会いに来てくれたときは楽しく談笑し、彼なら私の事を任せる事が出来ると認めてくれましたし、お義父様も最初こそ勝手に結婚した事を怒り、左之助さんと喧嘩していたけど。
私達の結婚を認めてくれた。
きっと神谷越路郎も認めてくれる筈です!
「娘を誑かす屑があっ!!」
あっ、ダメかもしれませんね。
「…なあ、オヤジさん乗っ取られてねえか?」
「そういや顔が半分くらい変わってるな」
「お父さんの顔が美形に!?」
「薫さん、ちょっと喜んでませんか?」
左之助さんと明神君なら手出しできるとは思うものの、やはり緋村家と神谷家の問題に他人の私達が土足で割り込んで仲裁するのは間違っているのでしょう。
───ですが、二人とも楽しそうです。