改めて左之助さん達に地獄の門の事を説明する。最初は俄には信じていなかった恵さんも妖怪の存在は知っているらしく、頭を押さえながら納得してくれた。
「しかし、何故糸色殿はその様に詳しく?」
「そういやそうだな」
緋村剣心の疑問に賛同するように明神君も頷き、みんなが一様に私の事を見つめる。左之助さんも向こう側に居るため、私を守ってくれる人はいません。
「私の家系は四百年ほど続いている霊媒を生業とする旧家、そういう類いの話や相談はごまんと来ます。表向きは芸能や文武の先生に勤めていますけど」
「確かに、景さんは作家ね」
「姿殿は探検家……しかも元は拙者を上回る程に卓越した剣術家の青年でござる。それに拙者の知らなかった飛天御剣流の奥義など……」
「おい。剣心の知らねえ飛天御剣流ってなんだよ、オレはそんなの聞かされてないぞ!教えろ、すがたってのは誰なんだよ!!」
いつの間にか「月華の剣士」に関する話題ではなく、飛天御剣流の知られざる奥義について話し合いを始めてしまった彼らに苦笑してしまう。
やはり、みんなで悩むより楽しい方が好きですね。
───とはいえ、だ。
「月華の剣士」に関わることになれば必然的に死んだ人間と遭遇してしまうこともある。地獄の門とは、あの世に繋がる扉、こちら側で開けることは出来ても閉めるには内側に居る必要がある。
「景、ちょっと来てくれ」
「?はい」
居間で話し合うみんなから外れた左之助さんに呼ばれ、私は首を傾げながら彼に着いていくと誰にも聞こえないように小さな声で「地獄の門が開くって事はアイツも来るのか?」と問われる。
アイツというのは何人か候補はいますが、左之助さんが警戒するということは私も関わっている人ですね。そこから更に絞り込んでいけば自ずと左之助さんの言っている相手は見つかりますが……。
「多分、会えると思いますよ」
「……そうか」
左之助さんが一番会いたい人は分かっている。でも、それだけは私の口から言っていい訳じゃない、無駄になるかもしれない希望を持たせるのはいけない。
まあ、左之助さんが望めば絶えず私は味方です。
「薫さん、髪の毛が見えていますよ」
「えっ、やだわ!?おほほほほ」
「おほほほ、じゃないです」
みんなして親指をピコピコしようとする準備を整えて、何をするつもりだったんですか。それはもう私には必要ないですよ、夫婦ですからね!
「明神君にして上げるが吉です」
「それもそうでござるな」
「あら、好いた人が出来たの?」
「だぁーっ!?やめろよ、親指!!」
私が受けた恥ずかしさは受け継がれますね。