ドクトル・バタフライと恵さんの検診を受け、もう出歩いても良いという言葉を戴き、私は久しぶりに左之助さんとしとりとお散歩をしています。
「月華の剣士」に関わる情報はまだ揃っておらず、私も憶測と推測を繰り返しているものの。やはり「巫女」たる彼女か、それらに通じる相手と会わなければ情報を纏めることは出来ない。
特に長谷川君の身柄は危険です。
無限刃を持つ少年────。
今でこそ井上君や久保田さんのおかげで弱肉強食の信念は薄まり、三人で楽しく生きていける方法を模索している普通の男の子ですが、未だに抜ける様子の無い無限刃が妖刀と化していた場合、志々雄真実の魂を長谷川君の身体に招く可能性はある。
そうなればあの発展途上だらけの若さに緋村剣心を追い詰めた百戦錬磨の強さ、最悪最強の妖刀という欲張りすぎるセットを手に入れることになります。
「左之助さん、お団子を食べますか?」
「おだんご!」
「しとりは食べたいのか?」
「ん!たべる!」
私と左之助さんの間に立って手を繋いでいるしとりは嬉しそうに笑い、お団子を売っている甘味処に走り出した瞬間、私と左之助さんの身体が一気に引っ張られ、そのまま甘味処まで空を舞っていた。
この子、日に日に怪力になってますね。
「きっと左之助さんに似たんですね」
「よし、怪力無双の娘なら嫁にやらずに済むな」
「左之助さん、ダメですよ。武藤君が産まれなくなっちゃいます、そうなったら可哀想ですよ?」
「カズキが何代目かによるがな」
糸色は四百年ほど続く旧家。
ちょうど姿お兄様は十代目か十一代目だったはずですが、姿お兄様は鎌足お義姉様と夫婦になったため本条家の当主にお成りになる可能性は大いにあります。
「景は継ぎたいとは思わないのか?」
「私は女ですから、それに姿お兄様を於いて霊媒を生業とする糸色家を切り盛りできるとは思えません。言ってはなんですが、四百年も続けば分家は増えていき、良からぬ事を考える人も出てきます」
「確かに、お前ん家はでかかったからなあ」
もしもそうなった場合は私か下の兄弟に任せることになりますけど。
私も病が治ったとはいえ当主に向いている性格ではないし、いっそのことしとりに任せてみるのも面白そうではありますね。
この子なら何にも縛られず、自由に何でも進んでいける。そんな気持ちになる。それにしとりだけでは行けないならお腹の子も一緒に歩いてくれれば、二人が幸せなら私も幸せになれます。
「しとり、天下を獲る気はありますか?」
「景、どうした?」
「ん!ほしい!」
「しとりも分かってないのに答えるなあ?」
むにむにっと頬っぺたを触られて嬉しそうにするしとりが、目を見開いて視線を人混みに向けた。なにか良くないものが見えているのかしら?