しとりの見つめる先には鷲塚慶一郎とススハム、外套と笠を被って素性を隠す人影。ゆっくりと彼らを見据えるように眼鏡のブリッジを押し上げる。
遠くに居るから目の悪い私だと顔を見ることは出来ず、白面の者の尾に襲われたときに一時的に出来た『未来予測』を使えば全ての行動パターンを読めますけど。
流石にそれは難しいですね。
それにしてもしとりはこれまでの出来事を振り返ってみると異様な気配に気付きやすい体質の様で、お父様の霊視の力が隔世遺伝してしまっている。やはり血筋は争えないものなのでしょうか。
「景、串を咥えて考え事は危ないだろ」
「へ?あ、すみません…」
左之助さんの言葉で思考の渦に呑まれていた意識が戻り、お団子を食べ始める。しとりはもう既に食べ終わっていて、私の分も一つ代わりに食べてくれる。
チラリとススハム達を見るも既に移動してしまったのか。人混みに紛れて見えなくなった彼らに少しだけ不思議に思い、私は首を傾げる。
「(ススハムさんなら私に気付いている筈なのに話し掛けてこなかった。鷲塚さんも一緒に居たとはいえ彼女の性格を考えると絶対に話し掛けて来ると思うのですが、そもそも三人で密会する理由は?)」
「ん!母ちゃんあれたべよ!」
「え?ああ、鼈甲飴ですね」
「べっこあめ?」
「フフ、べっこうあめです。お砂糖とお水で作ることが出来ますが、もっと美味しく日持ちを考慮すると水飴を混ぜてると美味しくなりますよ」
「お嬢ちゃん詳しいな。ひょっとして、飴屋か何かの子かい?」
鼈甲飴を売っている屋台のおじさんにそう言われ、周囲の視線に気付く。また知識をひけらかすように語ってしまった。こういう癖は治さないとです。
しかし、お嬢ちゃんですって♪︎
五年前は年上と思われることが多かったですが、年相応の見た目になってきたということですね。
「帰ったら一緒にやってみるか?」
「ん!やる!!」
「フフ、楽しそうですね。おじさん、鼈甲飴をくださいな」
「おう!別嬪さんだからな、おまけだ!」
い、いっぱい、鼈甲飴を貰ってしまった。
「どうしましょうか?」
「剣路や明日郎達にやれば多少は減ると思うが、あのオッサン……オレ達に在庫を纏めて渡してきただけじゃねえだろうな」
「しとりあめすき!」
「じゃあ、何も問題ないな!」
「ん!ない!」
左之助さんはしとりに甘いです。
私は斎藤一に叱ることを覚えるように言われましたが、しとりはいつも良い子です。だからこそ無理をさせてしまっていたら嫌だなあ……。